二階の窓から

百人一首 029 心あてに


心あてに おらばやおらむ 初霜の
をきまどはせる しらぎくの花

凡河内躬恒おほしかうちのみつね

品詞分解

こころ    
心あて
格助
心して。
慎重に。
お   お  
折ら 折ら
接助 係助 助動
ラ四
(未然形)
順接仮定条件 疑問 ラ四
(未然形)
意志
「や」の結び(連体形)
はつしも
初霜
格助
主格
お  
置き まどはせ
助動
カ四
(連用形)
サ四
(已然形)
存続
(連体形)
しらぎく はな
白菊
格助

現代語訳

心して
折るならば折ろうか。
初霜が
降りて(見分けが)分からなくしている
白菊の花を。

作品の解説

出典『古今和歌集』秋下・277

「白い初霜が降りて、どれが白菊か見分けがつかない」という非現実的なことを言い、初霜と白菊 両方の「白さ」の気品ある清々しさを詠み上げている。
菊を霜に見立てる表現は漢詩(平安貴族皆大好き 白居易『白氏文集』)にもあり、これを参考にしたのではないかという説もある。

白文

満園花菊鬱金黄
中有孤叢色似霜

書き下し文

満園まんえんの花の菊鬱金うこんのごとく黄なり
中に孤叢こそう有りて色霜に似る

作者

凡河内躬恒おほしかうちのみつね生没年未詳

894年の甲斐少目しょうさかんから925年の淡路権掾ごんのじょうまで、下級役人を歴任した。

『古今和歌集』の撰者の一人で、三十六歌仙の一人でもある。
紀貫之と親しく、中納言兼輔(☞27番 みかのはら の作者)の屋敷に出入りして屏風歌を多く詠進した。
鴨長明は『無名抄』で躬恒・貫之優劣論を書いており、源俊頼みなもとのとしより☞『俊頼髄脳』 の作者)や俊恵しゅんゑ☞『無名抄』深草の里 にも登場)から躬恒が高く評価されていた話がある。

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島津 忠夫 (翻訳)
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