二階の窓から

百人一首 028 山里は


山里は 冬ぞさびしさ まさりける
人めもくさも かれぬとおもへば

源宗于朝臣みなもとのむねゆきのあそん

品詞分解

やまざと
山里
係助
京都に近い山家。 区別
ふゆ
さびしさ
係助
強意
まさり ける
助動
ラ四
(連用形)
詠嘆
「ぞ」の結び(連体形)
ひとめ くさ
人目
係助 係助
縁語(→離れ) 並列 縁語(→枯れ) 並列
おも  
かれ 思へ
動【掛詞】 助動 格助 接助
離る+枯る
ラ下二(連用形)
完了
(終止形)
ハ四
(已然形)
順接確定条件

現代語訳

山里は(都とは違って)
冬が特に寂しさが
増すことだよ。
人が来ることもなくなり、
草も枯れてしまうと思うので。

作品の解説

出典『古今和歌集』冬・315

「かる」の掛詞が非常に巧みな歌。
縁語も織り交ぜてある。人目→「る」、 草→「る」
それぞれ、人間世界・自然界の対照を上手く織り込んでいる。

「山里」は京都にほど近い山村のことを言う。万葉集時代には登場しない言葉だ。
というのも、「山里」は『古今集』時代に中国の「隠遁思想」(本来は政争に敗れた官僚が身を隠すこと)が取り入れられてから、憧れの理想郷として流行し始めたからだ。
冬の山里のわびしさを素直に、余情豊かに詠み上げている。

作者

源宗于朝臣みなもとのむねゆきのあそん生年未詳 - 939)

是忠親王(光孝天皇の第一皇子)の子。
三十六歌仙の一人で、紀貫之・伊勢などと歌の贈答をしていた記録がある。
『大和物語』には、宇多天皇の前で官位が進まないことを暗に嘆く歌を読んだが、伝わらなかったという かわいそうな話が載っている。

百人一首 (角川ソフィア文庫)
→Amazon.co.jpで購入

島津 忠夫 (翻訳)
文庫: 317ページ
出版社: 角川書店; 新版 (1999/11)
言語: 日本語
商品パッケージの寸法: 15 x 10.6 x 1.4 cm
←前
027 みかのはら
次→
029 こころあてに
二階の窓から > 古典ノート > 品詞分解 百人一首 > 028 山里は