青山北郭
白水遶東城
此地一為別
孤蓬万里征
浮雲遊子意
落日故人情
揮手自茲去
蕭蕭班馬鳴
青山 北郭に横たはり
白水 東城を遶る
此の地 一たび別れを為し
孤蓬 万里に征く
浮雲 遊子の意
落日 故人の情
手を揮ひて 茲より去れば
蕭蕭として 班馬鳴く
押韻:城(sei)、 征(sei)、 情(sei)、 鳴(mei)
対句:首聯(第1句⇔第2句)、 尾聯(第5句⇔第6句)
律詩のルール上は、頸聯(第3句⇔第4句)を対句とするが、この詩ではなっていない。
細かい漢詩のルールについては 漢詩のルールと詩型で解説しています。
青い山々が 町の北に横たわって
白く流れる川が 町の東をめぐる。
この地で あなたと一度別れてしまうと
あなたは孤独に生えるヨモギのように 万里を彷徨うことになる。
空に浮かぶ雲は 旅にさすらうあなたの心だ。
沈む夕日は 昔からの友人の私の心だ。
手を振って 旅立とうとすると
寂しげに 別れ行く馬も鳴いていることだ。
盛唐の詩人、李白(701 - 762)の作。字は太白。漢詩の世界では杜甫と並んで最も尊ばれる存在だ。
五言律詩。
この詩では、直接的に「寂しい」とか「名残惜しい」という心情を表現していない。寂しさは、最後の馬の鳴き声を借りて表現している。
その場の風景の描写と比喩を用いることで、別れの寂しさを効果的に表現しているのである。
旅に出る状況の描写にあたって、3つの比喩が登場するので、それぞれ何を指しているのか見ていこう。
孤蓬(「蓬」はヨモギの1種。1本のヨモギ。)
秋になって枯れると、根元から抜けて風に吹かれて転がるという。
→ 旅立つ友人のこと。
浮雲(あてなく漂う雲。)
→ 旅立つ友人のこと。
落日(沈む夕日。)
→ 友人を送る寂しい心持ちの私(李白)のこと。