二階の窓から

『徒然草』より
名を聞くより

兼好法師

原文 現代語訳 ノート

原文(品詞分解)

 
 
格助
 
 
聞く
カ四・体
 
より、
格助
即時
 
やがて
 
おもかげ
面影
 
 
係助
 
 
推しはから
ラ四・未
 
るる
助動
自発・体
 
心地
 
 
する
サ変・体
 
を、
格助
 
 
見る
マ上一・体
 
とき
 
 
は、
係助
 
また、
 
 
かねて
 
 
思ひ
ハ四・用
 
つる
助動
完了・体
 
まま
 
 
格助
 
 
 
 
サ変・用
 
たる
助動
存続・体
 
 
係り→
こそ
係助
強意
→結び
なけれ。
形ク
 
昔物語
 
 
格助
 
 
聞き
カ四・用
 
接助
 
 
も、
係助
 
 
このごろ
 
 
格助
 
 
 
 
格助
 
 
 
 
の、
格助
完了・体
 
そこほど
代名
 
 
助動
断定・用
 
接助
 
係り→
係助
疑問
 
あり
補動
ラ変・用
→結び
けむ
助動
過去推量・体
 
格助
 
 
おぼえ、
ヤ下二・用
 
 
 
も、
係助
 
 
 
 
見る
マ上一・体
 
 
 
格助
 
 
 
 
格助
 
思ひ
ハ四・用
 
よそへ
ハ下二・未
 
らるる
助動
自発・体
 
は、
係助
 
たれ
代名
 
 
係助
 
 
かく
 
 
おぼゆる
ヤ下二・体
 
助動
断定・体
係り→
係助
疑問
(→結び省略)
 
 
 
また、
 
 
いかなる
形動ナリ
 
 
 
ぞ、
係助
 
 
ただ今
 
 
 
 
格助
 
 
言ふ
ハ四・体
 
こと
 
 
も、
係助
 
 
 
 
格助
 
 
見ゆる
ヤ下二・体
 
 
 
も、
係助
 
 
代名
 
 
格助
 
 
 
 
格助
 
 
うち
 
 
も、
係助
 
 
かかる
ラ変・体
 
こと
 
 
格助
 
 
いつぞや
 
 
あり
ラ変・用
 
助動
過去・体
 
終助
問いかけ
 
格助
 
 
おぼえ
ヤ下二・用
 
て、
接助
 
 
いつ
代名
 
 
格助
 
 
係助
 
 
思ひ
ハ四・用
い  
出で
ダ下二・未
 
助動
打消・已
 
ども、
接助
 
 
まさしく
形シク
 
あり
 
助動
過去・体
 
心地
 
 
格助
 
 
する
サ変・体
 
は、
係助
 
 
代名
 
 
ばかり
副助
 
 
かく
 
 
思ふ
ハ四・体
 
助動
断定・用
係り→
係助
疑問
(→結び省略)
 
 

現代語訳

 名前を聞くとすぐに、ただちにその人の顔つきが推し量られる気持ちがするのに、(実際に)会ってみるときには、前々から思っていたとおりの顔をしている人はいないものだ。昔の物語を聞いても、近頃の人の家の、そのあたりであったのだろうかと思われ、(物語の中の)人も、今見る人の中に思い合わせられるのは、誰もがこのように思うのだろうか。

 また、どのような折であったか、今の人が言うことも、目に見える物も、自分の心のうちも、このようなことがいつだったかあったんじゃないかと思われて、いつとは思い出せないけれど、確かにあった気持ちがするのは、私だけがこのように思うのだろうか。


作品

徒然草』より
兼好法師けんこうほうし(俗名:卜部兼好うらべかねよし)の作。成立は鎌倉時代末期(1330年ごろ)。

「つれづれなるままに〜」という冒頭からはじまることが書名の由来。住居、人生、情趣、芸能などについて論じた随筆。


ノート

第一段のまとめ

名前を聞いて顔を想像しても、会ってみると違うことが多い。
一方で、昔語りを聞くと、その登場人物が身近な人と思い合わせられることがある。

第二段のまとめ

いろんな物を見たり聞いたりすると、既視感デジャヴを感じることがあるよね。

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