二階の窓から

百人一首 074 うかりける


うかりける 人をはつせの 山下風
はげしかれとは いのらぬ物を

源俊頼朝臣みなもとのとしよりあそん

品詞分解

う   
憂かり ける
形ク 助動
「憂し」
(連用形)
過去
(連体形)
ひと
はつせ
格助 【掛詞】 格助
@名「初瀬」。奈良県桜井市の地名。
+ A動「果つ」。終わる。
やまおろし
山下風
山颪。
山から吹きおろす激しい風。
はげ    
激しかれ
形シク 格助 係助
「激し」
(命令形)
いの  
祈ら ものを
助動 終助
ラ四
(未然形)
打消
(連体形)
感動

現代語訳

(私の恋が通じず)つらかったあの人を
(どうにか想いが通じるように)初瀬の(長谷寺の)観音様に祈ったのに、恋は終わってしまった。
その初瀬の山颪よ、
激しくなれとは
祈っていないのになあ。
(=あの人が私につらく当たるようには祈っていないのになあ。)

作品の解説

出典千載集せんざいしゅう』恋2・708

色々な要素が複雑に詠み込まれており、現代語訳しにくい歌だ。
何が詠み込まれているかというと、

という物語性をもった歌である。
藤原定家はこの歌を「巧緻な風体で、なかなか真似ができない」と高く評価していた。

【補足】長谷寺の十一面観音かんのん

初瀬の長谷寺のご本尊として、十一面観音が古来有名です。
観音は救済の菩薩ぼさつとして信仰されてきました。
長谷寺の十一面観音像は女性達の篤い信仰を集めており、恋の救済を求めに来る人も多かったのです。

作者

源俊頼朝臣みなもとのとしよりあそん(1055 - 1129)

源経信(☞71番 夕されば〜 の作者)の三男。 俊恵しゅんゑの父。
官職には恵まれなかったが、篳篥ひちりき(和楽器)や和歌に優れていた。『金葉集』の撰者の一人。

『金葉集』以下の勅撰集に約200首入集。『金葉集』(35首)、『千載集』(52首)ではそれぞれ最多入集している歌人である。

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島津 忠夫 (翻訳)
文庫: 317ページ
出版社: 角川書店; 新版 (1999/11)
言語: 日本語
商品パッケージの寸法: 15 x 10.6 x 1.4 cm
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