高砂の 尾上の桜 さきにけり
とやまの霞 たゝずもあらなむ
たかさご | |
高砂 | の |
名 | 格助 |
高い山。 |
をのへ | さくら | |
尾上 | の | 桜 |
名 | 格助 | 名 |
山の上。 |
さ | ||
咲き | に | けり |
動 | 助動 | 助動 |
カ四 (連用形) |
完了 (連用形) |
詠嘆 (終止形) |
とやま | かすみ | |
外山 | の | 霞 |
名 | 格助 | 名 |
里に近い山。 |
た | ||||
立た | ず | も | あら | なむ |
動 | 助動 | 係助 | 動 | 終助 |
タ四 (未然形) |
打消 (連用形) |
ラ変 (未然形) |
願望 |
高い山の
上の桜が
咲いたことだなあ。
近くの山の霞よ、
立たないでいてくれ。
出典『後拾遺集』春上・120
桜の美しさをストレートには表現していない点が特徴的。
近くの山の霞を擬人化して「霞よ、立たないでね」とお願いすることで、遠くの山に見える美しい桜を、遠近の立体感をもって絵画的に想起させる歌だ。
特に言葉遊び的な技巧は無く、シンプルで品位のある歌となっている。
前中納言匡房(1041 - 1111)
大江氏。 大江匡衡(赤染衛門の夫)の曾孫にあたる。
大江氏は学者の家柄で、匡房も儒学・漢詩などを得意とした。
長らく出世する者の出なかった大江氏から久々に公卿の座に就き、正二位・権中納言まで昇進した。
和歌も得意としており、『後拾遺集』以下の勅撰集には119首入集している。