二階の窓から

百人一首 073 高砂の


高砂の 尾上の桜 さきにけり
とやまの霞 たゝずもあらなむ

前中納言匡房さきのちゆうなごんまさふさ

品詞分解

たかさご
高砂
格助
高い山。
をのへ さくら
尾上
格助
山の上。
さ  
咲き けり
助動 助動
カ四
(連用形)
完了
(連用形)
詠嘆
(終止形)
とやま かすみ
外山
格助
里に近い山。
た  
立た あら なむ
助動 係助 終助
タ四
(未然形)
打消
(連用形)
ラ変
(未然形)
願望

現代語訳

高い山の
上の桜が
咲いたことだなあ。
近くの山の霞よ、
立たないでいてくれ。

作品の解説

出典後拾遺集ごしゅういしゅう』春上・120

桜の美しさをストレートには表現していない点が特徴的。
近くの山の霞を擬人化して「霞よ、立たないでね」とお願いすることで、遠くの山に見える美しい桜を、遠近の立体感をもって絵画的に想起させる歌だ。

特に言葉遊び的な技巧は無く、シンプルで品位のある歌となっている。

作者

前中納言匡房さきのちゅうなごんまさふさ(1041 - 1111)

大江氏。 大江匡衡まさひら(赤染衛門の夫)の曾孫にあたる。
大江氏は学者の家柄で、匡房も儒学・漢詩などを得意とした。
長らく出世する者の出なかった大江氏から久々に公卿の座に就き、正二位・権中納言まで昇進した。

和歌も得意としており、『後拾遺集』以下の勅撰集には119首入集している。

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島津 忠夫 (翻訳)
文庫: 317ページ
出版社: 角川書店; 新版 (1999/11)
言語: 日本語
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