二階の窓から

百人一首 060 大江山


大江山 いくのゝ道の とほければ
まだふみもみず 天のはしだて

小式部内侍こしきぶのないし

品詞分解

おほえやま
大江山
 
みち
いくの
【掛詞】 格助 格助
地名「生野」
+動・名「行く 野」
場所 主格
とほ   
遠けれ
形ク 接助
(已然形) 原因
まだ ふみ
【掛詞】 係助 助動
名「文」
+動「踏み」
マ上一
(未然形)
打消
(終止形)
あまのはしだて
天橋立
京都府北部にある砂州。
日本三景の一つ。

現代語訳

大江山を
行く生野の道が
遠いので
まだ(母上からの)手紙を読んでもいないし、
天橋立の地を踏んだこともない。

ポイント

【掛詞】

いくの」 → 地名「生野」 と 動詞「行く」+名詞「
ふみ」 → 名詞「」 と 動詞「踏み

【縁語】

「踏み」→「橋」

作品の解説

出典『金葉集』雑上・550

母の和泉式部が丹後へ出向いているときに行われた歌合わせの際、藤原定頼から意地悪で「母上がいなくて不安でしょう」と言われて、咄嗟に出てきたという歌。
詳しい状況は『十訓抄』の☞大江山いく野の道 に詳しいので、こちらを参照。

母親譲りの当意即妙な才能を発揮した逸話が『袋草紙』『俊頼髄脳』『十訓抄』など多くの説話集・歌論で喧伝されたことで、非常に有名な歌となった。

作者

小式部内侍こしきぶのないし(999? -1025)

和泉式部いずみしきぶと橘道貞の子。
藤原教通のりみち公成きんなりなどと交際。
母の和泉式部も多くの熱愛で世を騒がせたが、負けず劣らずの恋多き女流歌人だった。

万寿2年(西暦1025年)に公成との子を出産した直後、25,6歳という若さで母に先立って病死してしまった。
勅撰集には4首入集。

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島津 忠夫 (翻訳)
文庫: 317ページ
出版社: 角川書店; 新版 (1999/11)
言語: 日本語
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