やすらはで ねなまし物を さよ更て
かたぶくまでの 月を見しかな
やす | |
休らは | で |
動 | 接助 |
ハ四 (未然形) |
打消 |
ね | |||
寝 | な | まし | ものを |
動 | 助動 | 助動 | 終助 |
ナ下二 (連用形) |
完了 (未然形) |
反実仮想 (連体形) |
感動 |
さよ | ふ | |
小夜 | 更け | て |
名 | 動 | 接助 |
カ下二 (連用形) |
順接 |
かたぶ | ||
傾く | まで | の |
動 | 副助 | 格助 |
カ四 (連体形) |
程度 |
つき | み | |||
月 | を | 見 | し | かな |
名 | 格助 | 動 | 助動 | 終助 |
マ上一 (連用形) |
過去 (連体形) |
詠嘆 |
(もしあなたが来ないと分かっていたら)
躊躇しないで
寝てしまっただろうになあ。
夜が更けて、
(月が)西に傾くまで
月を見てしまったことだよ。
出典『後拾遺集』恋2・680
詞書には
中関白少将に侍りける時はらからなる人に物いひわたり侍りけり、たのめてまうでこざりけるつとめて女にかはりてよめる
<現代語訳>
中関白(藤原道隆)が少将でいらしたとき、私の姉妹に(今晩行くと)言い付けました。それを頼りに待っていたのに、道隆が参上してこなかった早朝、女(=姉妹)に代わって詠んだ
とあり、つまり姉妹のために代作した歌だ。
待っていたのに来なかった男を詰る歌ではあるが、「来ないと分かってたら寝ちゃえば良かったわ」という比較的あっさりと穏やかな調子の歌だ。
作者の赤染衛門のさばさばとした人柄がにじみ出る。
赤染衛門(958?-没年未詳)
赤染時用の娘。 実際は母親の懐妊の時期から平兼盛の子なのではないか、という説もある。
977年頃、大江匡衡と結婚した。 夫婦仲が非常に良く、良妻賢母の評判が高かった。 このことから、匡衡衛門とも呼ばれた。
和歌を得意とし、和泉式部と並んで称せられた。『紫式部日記』で紫式部からは絶賛されている。
『拾遺集』以下の勅撰集に93首入集。