二階の窓から

百人一首 059 やすらはで


やすらはで ねなまし物を さよ更て
かたぶくまでの 月を見しかな

赤染衛門あかぞめえもん

品詞分解

やす   
休らは
接助
ハ四
(未然形)
打消
まし ものを
助動 助動 終助
ナ下二
(連用形)
完了
(未然形)
反実仮想
(連体形)
感動
さよ ふ  
小夜 更け
接助
カ下二
(連用形)
順接
かたぶ 
傾く まで
副助 格助
カ四
(連体形)
程度
つき
かな
格助 助動 終助
マ上一
(連用形)
過去
(連体形)
詠嘆

現代語訳

(もしあなたが来ないと分かっていたら)
躊躇しないで
寝てしまっただろうになあ。
夜が更けて、
(月が)西に傾くまで
月を見てしまったことだよ。

作品の解説

出典『後拾遺集』恋2・680

詞書には

中関白少将に侍りける時はらからなる人に物いひわたり侍りけり、たのめてまうでこざりけるつとめて女にかはりてよめる

<現代語訳>

中関白(藤原道隆)が少将でいらしたとき、私の姉妹に(今晩行くと)言い付けました。それを頼りに待っていたのに、道隆が参上してこなかった早朝、女(=姉妹)に代わって詠んだ

とあり、つまり姉妹のために代作した歌だ。

待っていたのに来なかった男を詰る歌ではあるが、「来ないと分かってたら寝ちゃえば良かったわ」という比較的あっさりと穏やかな調子の歌だ。
作者の赤染衛門のさばさばとした人柄がにじみ出る。

作者

赤染衛門あかぞめえもん(958?-没年未詳)

赤染時用ときもちの娘。 実際は母親の懐妊の時期から平兼盛の子なのではないか、という説もある。
977年頃、大江匡衡おおえのまさひらと結婚した。 夫婦仲が非常に良く、良妻賢母の評判が高かった。 このことから、匡衡衛門とも呼ばれた。

和歌を得意とし、和泉式部と並んで称せられた。『紫式部日記』で紫式部からは絶賛されている。
『拾遺集』以下の勅撰集に93首入集。

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島津 忠夫 (翻訳)
文庫: 317ページ
出版社: 角川書店; 新版 (1999/11)
言語: 日本語
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