二階の窓から

024 このたびは


此たびは ぬさもとりあへず 手向山
紅葉のにしき かみのまにまに

菅家くわんけ

品詞分解

(の) たび
代名 格助 格助
【掛詞】
度+旅
【掛詞】 取り敢えず
ぬさ とりあへ
係助 助動
【幣】 『取り合ふ』ハ下二
(未然形)
打消
(終止形)
たむけやま
手向山
名【掛詞】
「手向山」(奈良山の峠)
+ 「手向け」
もみぢ
紅葉 にしき
格助
【錦】
かみ
まにまに
格助
【神】 【随に】

現代語訳

この度の旅は
(突然のことなので)ぬさをきちんと捧げることができない。
とりあえずは手向山の
美しい紅葉を手向けの幣として
神よ、御心のままにお受け取りください。

作品の解説

出典『古今和歌集』羈旅・420

紅葉の美しさをそのまま詠まず、紅葉の錦を神への捧げ物とするという着想が、当時は非常に人気を博した。

これを下敷きとして、様々な人が紅葉の歌を詠んでいる。

秋の山 紅葉をぬさと たむくれば
住む我さへ 旅ごごちする

紀貫之きのつらゆき

など。

作者

菅家くわんけ(845 - 903)

菅原道真すがわらのみちざね。忠臣として名高く、宇多・醍醐天皇から重用され政治の世界で活躍した。
右大臣まで昇進するが、対立する左大臣の藤原時平ふじわらのときひら源光みなもとのひかるらから901年に謀反の噂を流され、大宰府だざいふ(現在の福岡県)に左遷される。
結局大宰府にて903年に病死。太宰府天満宮に学問の神として祀られている。
道真の死後、左遷の首謀者 源光の溺死、皇族の病死、清涼殿への落雷など天変地異が相次ぎ、道真の祟りだと噂された。

左遷の際のエピソードについては『大鏡』(☞ 菅原道真の左遷)を読んでみよう。

百人一首 (角川ソフィア文庫)
→Amazon.co.jpで購入

島津 忠夫 (翻訳)
文庫: 317ページ
出版社: 角川書店; 新版 (1999/11)
言語: 日本語
商品パッケージの寸法: 15 x 10.6 x 1.4 cm
←前
023 つきみれば
次→
025 なにしおはゞ
二階の窓から > 古典ノート > 品詞分解 百人一首 > 024 此たびは