二階の窓から

018 住の江の


住の江の 岸による波 よるさへや
ゆめの通路 人めよく覧

藤原敏行朝臣ふじはらのとしゆきのあそん

品詞分解

すみ  え
住の江
格助
住吉の浦(大阪)
きし なみ
よる
格助
ラ四「寄る」
(連体形)
よる さへ
副助 係助
【夜】 添加 問い掛け
かよひぢ
ゆめ 通路
格助
【夢】
ひと  
人め よく らむ
助動
【人目】 カ上二「避く」
(終止形)
推量
「や」の結び(連体形)

現代語訳

住の江の
岸に打ち寄せる波ではないが、
(人目の憚られる昼だけでなく)夜までも、
夢の通い路で
(あなたは)人目を避けようとするのだろうか。

作品の解説

出典『古今和歌集』恋2・559

「夢の通い路」とは、夢の中で逢うために通る道。
当時、夢で逢うというのは相手が自分を想っていることとされており、「夢の通い路を通ってくる」というのは恋の表現だ。(参考:☞伊勢物語『東下り』 コラム「夢で逢うということ」

昼間逢うことはおろか、夢の通い路を通ることさえ人目を憚っているという、忍ぶ恋を嘆く歌。

作者

藤原敏行朝臣ふじはらのとしゆきのあそん(生不詳-907)

陸奥出羽按察使あぜち富士麿の子。
三十六歌仙のひとりで、書道を得意としたとされる。現存するのは京都・神護寺の鐘に刻まれた銘文のみ。

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島津 忠夫 (翻訳)
文庫: 317ページ
出版社: 角川書店; 新版 (1999/11)
言語: 日本語
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