二階の窓から

017 ちはやぶる


ちはやぶる 神代かみよもきかず 竜田川
からくれなゐに 水くゝるとは

在原業平朝臣ありはらのなりひらのあそん

品詞分解

ちはやぶる
連語
枕詞(→神)
かみよ
神代 きか
係助 助動
カ四
(未然形)
打消
(終止形・二句切れ)
たつたがは
竜田川
歌枕
(奈良県の川)
からくれなゐ
格助
【韓紅】
みづ
くゝる
格助 係助
ラ四
(終止形)

現代語訳@

神の世でも聞いたことがない。
竜田川を
真っ赤に(紅葉が流れ)
(その下を)水がくぐって流れるとは。

顕昭けんしょう

現代語訳A

神の世でも聞いたことがない。
竜田川を
(紅葉が)真っ赤に
水をくくり染めにするとは。

賀茂真淵かものまぶち説(今日ではこちらが定説)

作品の解説

出典『古今和歌集』秋下・294

「くくる」の解釈が2パターン存在する。

  1. 顕昭説:「くぐる」と濁って読む説。
    こう読むと「水が紅葉の下を潜る」を解釈される。
  2. 賀茂真淵説:「くくる」と清音で読む説。
    布を糸でくくって、まだら模様に染める「くくり染め」と解釈される。

撰者とされる定家の記した『顕註密勘』には「水くぐる」として記載されており、当時は「水が潜る」というのが定説だったようだ。
しかし江戸時代以降、賀茂真淵らによって「くくる」と読む説が普及した。

作者

在原業平朝臣ありはらのなりひらのあそん(825-880)

在原氏。行平の異母弟。
六歌仙のひとりで、勅撰和歌集になんと87首も入集している。
「伊勢物語」の主人公のモデルとされており、奔放で歌才に恵まれたみやび男のイメージが形成されていった。

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島津 忠夫 (翻訳)
文庫: 317ページ
出版社: 角川書店; 新版 (1999/11)
言語: 日本語
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