立別れ いなばの山の 嶺におふる
まつとしきかば 今かへりこむ
た | わか |
立(ち) | 別れ |
接頭 | 動 |
強意 | ラ下二 (連用形) |
やま | |||
いなば | の | 山 | の |
【掛詞】 | 格助 | 名 | 格助 |
名「因幡」 ナ変動「去な」(未然)+接助「ば」 |
みね | ||
峰 | に | おふる |
名 | 格助 | 動 |
ハ上二「生ふ」 (連体形) |
まつ | と | し | きか | ば |
【掛詞】 | 格助 | 助 | 動 | 接助 |
名「松」 タ四動「待つ」(終止) |
強意 | カ四「聞く」 (未然形) |
仮定 |
いま | |||
今 | かへり | こ | む |
副 | 動 | 動 | 助動 |
ラ四「帰る」 (連用形) |
カ変「来」 (未然形) |
意志 |
(私は)いまお別れして
因幡の国へ去るが、その因幡の山の
峰に生えている
松のように私を待っていると聞くならば
今すぐに帰ってこよう。
出典『古今和歌集』離別・365
別れの挨拶の歌。
855年、行平が38歳のときに因幡の守となり任地へ向かう際に詠まれたと思われる。一首のうちに2つの掛詞(いばな、まつ)が登場する技巧に凝った歌だ。
中納言行平(818-893)
在原氏。業平の兄。
881年、在原氏の学問所として奨学院を創設した。これは藤原氏の勧学院にならったもの。