君がため 春の野に出て 若菜つむ
わが衣手に 雪はふりつゝ
きみ | ||
君 | が | ため |
代名 | 格助 | 形式名 |
はる | の | い | |||
春 | の | 野 | に | 出で | て |
名 | 格助 | 名 | 格助 | 動 | 接助 |
ダ下二 (連用形) |
わかな | つ |
若菜 | 摘む |
名 | 動 |
マ四 (連体形) |
ころもで | |||
わ | が | 衣手 | に |
代名 | 格助 | 名 | 格助 |
【我】 | 所属 |
ゆき | ふ | ||
雪 | は | 降り | つつ |
名 | 係助 | 動 | 接助 |
主題 | ラ四 (連用形) |
継続・余情 |
あなたのために
春の野に出て
若菜を摘む
私の袖口に
雪が降りかかっていることだよ
出典『古今和歌集』春上・21
光孝天皇が親王であった頃に詠まれた歌。
「若菜」というのは、春に芽を出したばかりの食用の菜のこと。お正月明けに食べる七草がゆに登場する せり、なずな などを思い浮かべてもらえばよいでしょう。若菜は邪気を払うものとされており、「若菜摘み」は七草がゆの起源とされています。
雪に降られながら若菜を摘んだという、心のこもった清々しい情景が浮かびます。
ところで、「君」というのは誰なのか?という疑問が出てくるかもしれません。
ふつうは「君=主君」なので、光孝天皇が親王であったとき天皇だった陽成天皇のこと、というのが合理的な一つ目の説です。
しかし、「若菜を摘む」のは古来女性の仕事だったので、この歌が女性の立場から詠まれたものだと解釈すれば、「君=愛する男性」ということになります。どちらかというと、こちらのほうが自然な解釈でしょう。
光孝天皇(830-887)
第58代天皇。884〜887年在位。
親王時代から僧正遍昭と親しくしており、和歌の才能に秀でていた。他にも鷹狩を復活させるなど、文化人として名を馳せた。