二階の窓から

015 きみがため


君がため 春の野に出て 若菜つむ
わが衣手に 雪はふりつゝ

光孝天皇くわうかうてんわう

品詞分解

きみ
ため
代名 格助 形式名
はる い  
出で
格助 格助 接助
ダ下二
(連用形)
わかな つ  
若菜 摘む
マ四
(連体形)
ころもで
衣手
代名 格助 格助
【我】 所属
ゆき ふ 
降り つつ
係助 接助
主題 ラ四
(連用形)
継続・余情

現代語訳

あなたのために
春の野に出て
若菜を摘む
私の袖口に
雪が降りかかっていることだよ

作品の解説

出典『古今和歌集』春上・21

光孝天皇が親王であった頃に詠まれた歌。

「若菜」というのは、春に芽を出したばかりの食用の菜のこと。お正月明けに食べる七草がゆに登場する せり、なずな などを思い浮かべてもらえばよいでしょう。若菜は邪気を払うものとされており、「若菜摘み」は七草がゆの起源とされています。
雪に降られながら若菜を摘んだという、心のこもった清々しい情景が浮かびます。

ところで、「君」というのは誰なのか?という疑問が出てくるかもしれません。
ふつうは「君=主君」なので、光孝天皇が親王であったとき天皇だった陽成天皇のこと、というのが合理的な一つ目の説です。
しかし、「若菜を摘む」のは古来女性の仕事だったので、この歌が女性の立場から詠まれたものだと解釈すれば、「君=愛する男性」ということになります。どちらかというと、こちらのほうが自然な解釈でしょう。

作者

光孝天皇くわうかうてんわう(830-887)

第58代天皇。884〜887年在位。
親王時代から僧正遍昭と親しくしており、和歌の才能に秀でていた。他にも鷹狩を復活させるなど、文化人として名を馳せた。

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島津 忠夫 (翻訳)
文庫: 317ページ
出版社: 角川書店; 新版 (1999/11)
言語: 日本語
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