やまと歌は、人の心をたねとして、よろづの言の葉とぞなれりける。世の中にある人、ことわざしげきものなれば、心に思ふことを、見るもの、聞くものにつけて言ひいだせるなり。
花に鳴くうぐひす、水にすむかはづの声を聞けば、生きとし生けるもの、いづれか歌を詠まざりける。
力をも入れずして、
和歌は、人の心を根源として、様々な言葉になったものだ。世の中に生きている人は、いろいろな出来事や行動が多いものなので、その時々心に思うことを、見る物や聞く物にかこつけて、(和歌で)表現する。
花(=旧暦での春の花、つまり梅)に鳴く鶯や、清流に住む蛙の声を聞くと、命を持った生き物で、歌を詠まないものがあろうか。(いや、生き物はみな何か歌を詠むのだ。)
力を入れもしないで天や地を動かし、目に見えない霊や魂をも感じ入らせ、男女の仲を和やかにさせ、勇猛な武士の心をも心和やかにさせるのは、和歌なのだ。
905年、
撰者は
歌のテーマ毎に
・ 春 上、下
・ 夏
・ 秋 上、下
・ 冬
・ 賀(お祝い、長寿を祈る歌など)
・ 離別
・
・
・ 恋 1〜5
・
・
・
・
の計20巻に分けてまとめられた。 この分類は、以降の勅撰和歌集にも引き継がれていった。
『万葉集』が素朴で力強い「
掛詞、縁語、比喩などの表現技法が駆使されており、芸術性を追求した歌が多いのが特徴だ。
原文は
植物に例えた比喩を2つ(「種」と「葉」、縁語)使っている。
人の心を種として、よろづの言の葉となる