二階の窓から

百人一首 089 玉のをよ


玉のをよ 絶なば絶ね ながらへば
忍ぶることの よはりもぞする

式子内親王しよくしないしんわう

品詞分解

たま
格助 間投助
呼びかけ
た   た  
絶え 絶え
助動 接助 助動
ヤ下二
(連用形)
完了
(未然形)
仮定条件 ヤ下二
(連用形)
完了
(命令形)
 
ながらへ
接助
ハ下二
(未然形)
仮定条件
しの   
忍ぶる こと
格助
バ上二
(連体形)
主格
よは  
弱り する
係助 係助
ラ四
(連用形)
強意 サ変
「ぞ」の結び(連体形)

現代語訳

私の命よ、
絶えるなら絶えてしまえ。
生き長らえたら、
我慢して耐えることが
できずに弱って(心が露わになって)しまっては大変だから。

☆ ポイント:「玉の緒」 ☆

そのままの意味で言うと、「玉を貫き通す緒」。 転じて、「魂を体に繋いでおくもの」。命。

の縁語 → 「絶ゆ」、「ながらふ」、「弱る」、

作品の解説

出典新古今集しんこきんしゅう』恋1・1034

「忍ぶる恋」というお題で詠まれた。 内親王という高い身分にもかかわらず、「命よ絶えてしまえ」という情熱的で激しい調子の歌だ。

式子内親王は生涯未婚であり、自身の実感を元にした歌ではないと思われる。
それにもかかわらず、幻想的・理想的な恋の悲しさを見事に文学的に表現している。 内親王が追求した恋の姿勢だ。
自身は未婚を貫いたのだから、ある種の自虐もこもっているだろう。 そういった事情を考えると一層切ない印象が強まる。

作者

式子内親王しょくしないしんのう(1149 - 1201)

後白河院の第三皇女。
定家と恋仲にあったという説もあるが、真偽は定かではなく怪しい。

歌合わせなどの歌壇での記録があまりないが、『千載集』以降の勅撰集に155首入集。 陰で活躍した歌人だ。

百人一首 (角川ソフィア文庫)
→Amazon.co.jpで購入

島津 忠夫 (翻訳)
文庫: 317ページ
出版社: 角川書店; 新版 (1999/11)
言語: 日本語
商品パッケージの寸法: 15 x 10.6 x 1.4 cm
←前
088 なにはへの
次→
090 みせばやな
二階の窓から > 古典ノート > 品詞分解 百人一首 > 089 玉のをよ