二階の窓から

百人一首 086 歎けとて


歎けとて 月やは物を おもはする
かこちがほなる わがなみだかな

西行法師さいぎやうほうし

品詞分解

なげ  
歎け とて
格助
カ四
(命令形)
…と言って。
つき もの
係助 係助 格助
反語
おも  
思は する
助動
ハ四
(未然形)
使役
「や」の結び(連体形)
かこ  がほ
託ち顔 なる
助動
嘆き顔。 断定
(連体形)
なみだ
かな
格助 終助
連体修飾
の。
詠嘆

現代語訳

嘆けと言って
月が私に
物思いをさせるのだろうか。(いや、そうではない)
(それを月のせいにして)恨めしい顔をしている
私の涙であることだよ。

作品の解説

出典千載集せんざいしゅう』恋5・929

詞書は「月前恋といへる心をよめる」(円位法師)とある。
澄んだ月を前に、思い通りに行かない恋を想って涙を落とす。そんな恋の歌だ。

西行法師は勅撰集に266首入集するなど、一流の歌人であった。
「法師(お坊さん)だというのに、恋の歌とはいかがなものか?」と疑問に思うかもしれない。実は西行は失恋が原因で出家したという説が根強い。
そういう訳もあってか、恋の歌は西行の得意分野だった

作者

西行法師さいぎょうほうし(1118 - 1190)

俗名は佐藤義清のりきよ。 北面武士(上皇の警護役)などを務めたが、23歳で出家した。出家の理由には友人の死・失恋などの諸説がある。
法名は円位。 後に西行と号す。 中四国・奥州など各地を行脚して、河内国(現在の大阪府)で没した。

勅撰集には266首入集。特に『新古今集』では94首が選ばれており、入撰数1位。

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島津 忠夫 (翻訳)
文庫: 317ページ
出版社: 角川書店; 新版 (1999/11)
言語: 日本語
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