淡路島 かよふ千鳥の なく声に
幾夜寝覚めぬ すまの関守
あはぢしま |
淡路島 |
名 |
かよ | ちどり | |
通ふ | 千鳥 | の |
動 | 名 | 格助 |
ハ四 (連体形) |
※冬の季語 | 主格 |
な | こゑ | |
鳴く | 声 | に |
動 | 名 | 格助 |
カ四 (連体形) |
いくよ | ねざ | |
幾夜 | 寝覚め | ぬ |
名 | 動 | 助動 |
マ下二 (連用形) |
完了 (終止形) |
すま | せきもり | |
須磨 | の | 関守 |
名 | 格助 | 名 |
【歌枕】 現在の兵庫県神戸市。 |
関所の番人。 |
淡路島から
通ってくる千鳥が
(悲しげに)鳴く声に
幾夜目を覚ましたことだろう、
この須磨の関守は。
出典『金葉集』冬・270
「千鳥」は冬の季語である。
冬の千鳥の悲しげな鳴き声と、寂しい須磨の場所柄、寂しげな関守の様子から、自らの旅の寂しさ・哀れさを詠み上げた歌だ。
須磨と言えば『源氏物語』の須磨の巻だが、この78番歌は、須磨の巻に登場する以下の和歌を踏まえていると思われる。
友千鳥 もろごゑに鳴く あかつきは
ひとりねざめの 床もたのもし<現代語訳>
友千鳥が 私と一緒に声をあわせて泣く 明け方は
一人で目覚める 寝床でさえも心強いことだ。
なお「淡路島」は歌枕として万葉集時代からよく和歌に取り上げられてきたが、千鳥・関守との組み合わせはこの歌が最初だ。
この歌が流行って以降、淡路島と千鳥・関守の組み合わせの歌が多く登場することになった。
源 兼昌 (生没年未詳)
源俊輔の二男。
堀河院・忠通の歌壇に属していたようだが、あまり名高い歌人とはいえない存在だった。
百人一首に選ばれたのは、この歌が優れていて流行ったからだろう。
『金葉集』以下、勅撰集には7首のみ入集している。