二階の窓から

百人一首 064 朝ぼらけ


朝ぼらけ 宇治のかはぎり たえだえに
あらはれわたる 瀬々の網代木

権中納言定頼ごんちゅうなごんさだより

品詞分解

あさ    
朝ぼらけ
夜がほのぼの明けた頃。
(「あけぼの」の少し後)
うぢ かはぎり
宇治 川霧
格助
宇治川。
琵琶湖から淀川に注ぐ。
た  だ   
絶え絶えに
形動ナリ
(連用形)
 
あらはれ わたる
補動
ラ下二
(連用形)
一面に…する。
ラ四
(連体形)
せぜ あじろぎ
瀬々 網代木
格助  【体言止め】
魚を捕る網を
仕掛けるための杭。

現代語訳

明け方に
宇治川の霧が
途切れ途切れになって、
一面に現れてきた
川瀬の網代木だなあ。

作品の解説

出典千載集せんざいしゅう』冬・419

説明無用な叙景歌。
冬の早朝、夜闇と川霧が晴れてきて「網代木」が途切れ途切れ見えてきた、すがすがしい景色が思い浮かぶ歌だ。

この歌が詠まれた当初は、あまりにも単純な歌なのでほとんど評価されなかった。
ところが時代が下ってムードを重視するようになってきた平安後期以降、徐々にこの歌の良さを見直す動きが強まった。

作者

権中納言定頼ごんちゅうなごんさだより(995 - 1045)

藤原定頼。 藤原公任の子。

父も有名な歌人だが定頼も典型的な貴族歌人で、歌・書・踊経などの名手だった。
小式部内侍・大弐三位・相模などと親しくしていたようである。
『後拾遺集』以下、勅撰集に45首入集。

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島津 忠夫 (翻訳)
文庫: 317ページ
出版社: 角川書店; 新版 (1999/11)
言語: 日本語
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