二階の窓から

百人一首 063 今はたゞ


今はたゞ おもひ絶なん とばかりを
人づてならで いふよしもがな

左京大夫道道さきやうのだいぶみちまさ

品詞分解

いま
たゞ
係助
 
おも   た  
思ひ 絶え
助動 助動
ハ四
(連用形)
ヤ下二
(連用形)
完了
(未然形)
意志
(終止形)
 
ばかり
格助 副助 格助
限定
ひと    
人づて なら
助動 接助
断定
(未然形)
打消
い  
言ふ よし もがな
終助
ハ四
(連体形)
方法。 願望

現代語訳

今はもう
『あきらめて思い切ってしまおう』と
それだけでもいいから
人づてではなくて(直接あなたに)
言う方法があればなあ。

作品の解説

出典後拾遺集ごしゅういしゅう』恋3・750

三条天皇の皇女、前斎宮当子内親王さきのさいぐうとうしないしんのうとこっそり逢瀬を重ねていたが、それが帝にばれて守りがついてしまい、通うことが出来なくなってしまった。
もう会えない絶望的な気持ちを、そのまま詠み上げた歌。

作者

左京大夫道雅さきやうのだいぶみちまさ(992 - 1054)

藤原道雅。 藤原伊周これちかの息子。
祖父の関白 道隆に大変気に入られていたが、3歳の時に祖父が逝去。翌年には父が失脚し、没落する家で成長した。
皇女との密通のみならず、暴行事件を企てた疑いがあったり、賭博のいざこざで喧嘩を起したりと、とにかく乱行が絶えず、裏で「悪三位」とも呼ばれていたらしい。

勅撰集には6首のみの入集だが、自身で歌合わせを催すなど、歌には熱心だったようだ。

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島津 忠夫 (翻訳)
文庫: 317ページ
出版社: 角川書店; 新版 (1999/11)
言語: 日本語
商品パッケージの寸法: 15 x 10.6 x 1.4 cm
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