滝の糸は 絶て久しく なりぬれど
名こそながれて なほきこえけれ
たき | いと | ||
滝 | の | 糸 | は |
名 | 格助 | 名 | 係助 |
※【音】 とする本もある |
た | ひさ | |
絶え | て | 久しく |
動 | 接助 | 形シク |
ヤ下二 (連用形) |
(連用形) |
なり | ぬれ | ど |
動 | 助動 | 接助 |
ラ四 (連用形) |
完了 (已然形) |
逆説 |
な | なが | ||
名 | こそ | 流れ | て |
名 | 係助 | 動 | 接助 |
強意 | ラ下二 (連用形) |
き | ||
なほ | 聞こえ | けれ |
副 | 格助 | 助動 |
ヤ下二 (連用形) |
詠嘆 「こそ」の結び(已然形) |
滝が糸のように流れ落ちるのが
無くなってから随分長い間が
経ったけれど、
その名前は広く流れ伝わって
いまだにその名を轟かせていることだなあ。
「滝」→「絶え」、「流れ」、「聞こえ」
第三句:「なり」
第四句:「名」
第五句:「なほ」
と、最初を「な」の音で揃えている。
出典『拾遺集』雑上・449
詞書には、「大覚寺に人々あまたまかりたりけるに、古き滝をよみ侍りける」
現代語訳すると:「大覚寺(京都嵯峨の寺)に人々がたくさん参上していたときに、古い滝を詠みました」
とある。
たとえ滝の流れが無くなってしまっても、その名声は流れ伝わり続ける、という対比を詠み上げており面白い歌だ。
この歌のお陰もあり、大覚寺の滝跡は「名古曽の滝」として、千年以上経った現在も名所となっている。
大納言公任(966-1041)
藤原公任。 四条大納言とも呼ばれた。
和歌・管弦どちらにも優れた才能を示した。
『北山抄』『和漢朗詠集』の編者で、『拾遺抄』の撰者。
『三十六人撰』『和歌九品』などを編著。 自身の歌集『公任集』などもあり、和歌・歌学の大家だ。
『拾遺集』以下勅撰集に89首入集。