二階の窓から

百人一首 055 滝の糸は


滝の糸は 絶て久しく なりぬれど
名こそながれて なほきこえけれ

大納言公任だいなごんきんたふ

品詞分解

たき いと
格助 係助
  ※【音】
とする本もある
た   ひさ   
絶え 久しく
接助 形シク
ヤ下二
(連用形)
(連用形)
 
なり ぬれ
助動 接助
ラ四
(連用形)
完了
(已然形)
逆説
なが  
こそ 流れ
係助 接助
強意 ラ下二
(連用形)
き   
なほ 聞こえ けれ
格助 助動
ヤ下二
(連用形)
詠嘆
「こそ」の結び(已然形)

現代語訳

滝が糸のように流れ落ちるのが
無くなってから随分長い間が
経ったけれど、
その名前は広く流れ伝わって
いまだにその名を轟かせていることだなあ。

ポイント

縁語

「滝」→「絶え」、「流れ」、「聞こえ」

第三句:「なり」
第四句:「名」
第五句:「なほ」
と、最初を「な」の音で揃えている。

作品の解説

出典『拾遺集』雑上・449

詞書には、「大覚寺に人々あまたまかりたりけるに、古き滝をよみ侍りける」
現代語訳すると:「大覚寺(京都嵯峨の寺)に人々がたくさん参上していたときに、古い滝を詠みました」
とある。

たとえ滝の流れが無くなってしまっても、その名声は流れ伝わり続ける、という対比を詠み上げており面白い歌だ。
この歌のお陰もあり、大覚寺の滝跡は「名古曽なこその滝」として、千年以上経った現在も名所となっている。

作者

大納言公任だいなごんきんたふ(966-1041)

藤原公任。 四条大納言とも呼ばれた。

和歌・管弦どちらにも優れた才能を示した。
『北山抄』『和漢朗詠集』の編者で、『拾遺抄』の撰者。
『三十六人撰』『和歌九品』などを編著。 自身の歌集『公任集』などもあり、和歌・歌学の大家だ。

『拾遺集』以下勅撰集に89首入集。

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島津 忠夫 (翻訳)
文庫: 317ページ
出版社: 角川書店; 新版 (1999/11)
言語: 日本語
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