君がため おしからざりし 命さへ
ながくもがなと おもひぬる哉
きみ | ||
君 | が | ため |
代名 | 格助 | 形名 |
連体修飾 | 目的 |
お | ||
惜しから | ざり | し |
形シク | 助動 | 助動 |
(未然形) | 打消 (連用形) |
過去 (連体形) |
いのち | |
命 | さへ |
名 | 副助 |
添加 |
なが | ||
長く | もがな | と |
形ク | 終助 | 格助 |
(連用形) | 願望 |
おも | ||
思ひ | ける | かな |
動 | 助動 | 終助 |
ハ四 (連用形) |
詠嘆 (連体形) |
詠嘆 |
あなたのためなら
惜しくないと思っていた
この命までも、
(逢った後は)長く続いて欲しい(=末永く逢いたい)と
思ったことだよ。
出典『後拾遺集』恋2・669
歌集の詞書には「人の許よりかへりて、つとめて」(女のところから帰って、早朝)とあり、後朝の歌である。
あなたとずっと一緒に居たい、という内容は素直でとても清々しい。
義孝は21歳の若さで兄を追うようにして亡くなってしまったが、その美しい死は当時の様々な記録に残っている。
こういった噂も相まって切ない死とともに、当時の人々の心を掴んだようである。
藤原義孝(954-974)
藤原伊尹の子。
非常に信心深く父の没後は出家も考えたが、幼い子(行成)がいたために思いとどまった。
21歳のときに、兄の挙賢が疱瘡にかかり亡くなってしまったとき、同じ日の夕方に後を追うように、若くして夭死してしまった。
死に際も、法華経を読みたいから火葬しないよう哀願するほどの信心深さであったという逸話が残る。
勅撰集には12首入集。 三十六歌仙のひとり。