みかきもり 衛士の焼火の 夜はもえ
昼は消つゝ 物をこそおもへ
みかきもり |
御垣守 |
名 |
ゑじ | たくひ | ||
衛士 | の | 焼火 | の |
名 | 格助 | 名 | 格助 |
主格 | 連体修飾 |
よる | ||
夜 | は | もえ |
名 | 係助 | 動 |
ヤ下二「燃ゆ」 (連用形) |
ひる | き | ||
昼 | は | 消え | つつ |
名 | 係助 | 動 | 接助 |
ヤ下二「消ゆ」 (連用形) |
継続 |
もの | |||
物 | を | こそ | 思へ |
名 | 格助 | 係助 | 動 |
強意 | ハ四 「こそ」の結び(已然形) |
御垣守の
衛士が焚く火のように
(恋に悩む私の心も)夜は燃えて
昼は消えてを繰り返し
物思いに沈んでいることだよ。
出典『詞花集』恋上・225
御垣守とは、宮中の門を警護する人のこと。衛士も同じ。 門を警備するため、夜は火を燃やして番をするのが衛士の職務だった。
暗闇の中で燃える火から、燃え上がる恋心を連想させている。
いっぽう「消え」るについては、文字通り火が消えることと、恋の熱い気持ち・魂が消えてしまうことをかけている。
燃え上がる恋心を巧みに詠み上げたこの歌は、理詰めな作風の歌が多い能宣の作としては異色である。
また、自撰の和歌集『能宣集』にも掲載が無い。
『古今和歌六帖』(970年頃成立)巻一にある以下の和歌(作者不記)と同一のものが、形を変えて『詞花集』で誤って能宣作として載ってしまったという説が有力。
君が守る ゑじのたくひの ひるはたえ
よるはもえつつ 物をこそ思へ
大中臣能宣(921-991)
父は大中臣頼基。
951年に梨壺(村上天皇の命で置かれた和歌所)の五人の寄人に選ばれ、『万葉集』の訓点、『後撰和歌集』の撰集に従った。
勅撰集には125首入集している。三十六歌仙のひとり。