二階の窓から

百人一首 042 契りきな


契りきな かたみに袖を しぼりつゝ
末の松山 なみこさじとは

清原元輔きよはらのもとすけ

品詞分解

ちぎ  
契り
助動 終助
ラ四
(連用形)
過去
(終止形)
感動
そで
かたみに
格助
互いに。
しぼ  
絞り つつ
接動
ラ四
(連用形)
反復・継続
すゑのまつやま
末の松山
【歌枕】
宮城県多賀城の海岸にあった山。
なみ こ  
越さ
助動 格助 係助
サ四
(未然形)
打消意志
(終止形)

現代語訳

かたく約束したのになあ。
お互いに袖を
何度も絞って、
末の松山を
波が越すことがない(ように、私たちの愛も決して変わるまい)とね。

作品の解説

出典『後拾遺集』恋4・770

「末の松山」は宮城県の海岸にあったという山。決して波が越えないという伝承があった。
固い契りを交わしたのに心変わりしてしまった相手に対する激しい恨みを、古歌(以下に抜粋)を踏まえて流麗に詠み上げている。

ちなみに詞書には「心かはりて侍りける女に 人にかはりて 清原元輔」 (心変わりしてしまった女に 人に代わって 清原元輔)とあり、誰かの代作として詠んだ歌である。

*古歌「君おきて」

君おきて あだし心を 我が持たば
末の松山 浪も越えなむ

(古今集・みちのくのうた)

<現代語訳>

あなたをさしおいて 浮気心を 私が持ったら
末の松山を 波が越えてしまうだろう。
(=そんなことは決してあり得ない)

この歌にあるように、「末の松山といえば、固く男女の契りを交わし、決して浮気することはあり得ない」というイメージがあった。
『源氏物語』浮舟の巻でも、薫大将が浮舟の心変わりを「末の松山」伝承を下敷きに詠んだ歌が登場する。

作者

清原元輔きよはらのもとすけ(908-990)

清原深養父の孫で、清少納言の父。 三十六歌仙のひとり。
あっという間に一句詠み上げてしまうことで有名で、他の貴族の家に出入りして歌を代作することも多かったようである。
勅撰和歌集に106首入集するなど、歌人として高名であった。

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島津 忠夫 (翻訳)
文庫: 317ページ
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言語: 日本語
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