浅茅生の をのゝしのはら 忍ぶれど
あまりてなどか 人のこひしき
あさぢふ | |
浅茅生 | の |
名 | 格助 |
浅茅(丈の短い茅)が生えている。 【枕詞→小野】 |
をの | しのはら | |
小野 | の | 篠原 |
名 | 格助 | 名 |
野。野原。 | 【序詞→しのぶ】 |
しの | |
忍ぶれ | ど |
動 | 接助 |
バ上二 (已然形) |
逆説 |
あま | |||
余り | て | など | か |
動 | 接助 | 副 | 係助 |
ラ四 (連用形) |
順接 | 疑問 |
ひと | こひ | |
人 | の | 恋しき |
名 | 格助 | 形シク |
想い人。 | 主格 | 「か」の結び(連体形) |
浅茅の生えている
野の篠原の「しの」ではないが、
これまで忍んできたけれど
(忍ぶことができる)限度を超えて どうして
こんなにあなたのことが恋しいのだろうか。
・最初の二句は、「篠原」から「忍ぶ」に繋げるための序詞。
・「浅茅」は短い茅。「小野」の枕詞。丈が短いので、隠れられないことの暗示にもなっている。
出典『後撰集』恋1・577
『古今和歌集』に原歌がある。以下のとおり。
あさぢふの をののしの原 しのぶとも
人知るらめや いふ人なしに
(詠み人知らず)<現代語訳>
浅茅の生えている野の篠原の「しの」ではないが、恋心を忍んでいても
想い人は(私の気持ちを)知るだろうか。(いや、知ることはない。)伝える人がいなければ。
原歌でも最初の二句は同じ。その後、反語を用いて想いが伝わらないことを詠んでいる。
対して参議等は畳み上げるような調子で、堪えきれない恋心を積極的に歌い上げており、違った趣を出している。
参議等(880-951)
源等。嵯峨天皇の曾孫。
947年に参議、951年に正四位下。 官暦の記録は残るが、歌人としての経歴は明らかではなく、勅撰集では『後撰集』に4首入選するのみで、有名とはいえなかった。
歌人としては無名だったが、定家がこの歌を優れた歌と評価し、百人一首に選び入れたと思われる。