二階の窓から

百人一首 039 浅茅生の


浅茅生の をのゝしのはら 忍ぶれど
あまりてなどか 人のこひしき

参議等さんぎひとし

品詞分解

あさぢふ
浅茅生
格助
浅茅(丈の短いちがや)が生えている。
【枕詞→小野】
をの しのはら
小野 篠原
格助
野。野原。 【序詞→しのぶ】
しの   
忍ぶれ
接助
バ上二
(已然形)
逆説
あま  
余り など
接助 係助
ラ四
(連用形)
順接 疑問
ひと こひ  
恋しき
格助 形シク
想い人。 主格 「か」の結び(連体形)

現代語訳

浅茅の生えている
野の篠原の「しの」ではないが、
これまで忍んできたけれど
(忍ぶことができる)限度を超えて どうして
こんなにあなたのことが恋しいのだろうか。

ポイント

・最初の二句は、「原」から「ぶ」に繋げるための序詞。
・「浅茅」は短いちがや。「小野」の枕詞。丈が短いので、隠れられないことの暗示にもなっている。

作品の解説

出典『後撰集』恋1・577

『古今和歌集』に原歌がある。以下のとおり。

あさぢふの をののしの原 しのぶとも
人知るらめや いふ人なしに
(詠み人知らず)

<現代語訳>

浅茅の生えている野の篠原の「しの」ではないが、恋心を忍んでいても
想い人は(私の気持ちを)知るだろうか。(いや、知ることはない。)伝える人がいなければ。

原歌でも最初の二句は同じ。その後、反語を用いて想いが伝わらないことを詠んでいる。

対して参議等は畳み上げるような調子で、堪えきれない恋心を積極的に歌い上げており、違った趣を出している。

作者

参議等さんぎひとし(880-951)

源等みなもとのひとし。嵯峨天皇の曾孫。
947年に参議、951年に正四位下。 官暦の記録は残るが、歌人としての経歴は明らかではなく、勅撰集では『後撰集』に4首入選するのみで、有名とはいえなかった。
歌人としては無名だったが、定家がこの歌を優れた歌と評価し、百人一首に選び入れたと思われる。

百人一首 (角川ソフィア文庫)
→Amazon.co.jpで購入

島津 忠夫 (翻訳)
文庫: 317ページ
出版社: 角川書店; 新版 (1999/11)
言語: 日本語
商品パッケージの寸法: 15 x 10.6 x 1.4 cm
←前
038 わすらるる
次→
040 しのぶれど
二階の窓から > 古典ノート > 品詞分解 百人一首 > 039 浅茅生の