白露に 風のふきしく 秋の野は
つらぬきとめぬ 玉ぞちりける
しらつゆ | |
白露 | に |
名 | 格助 |
草花についた 白く光る露。 |
かぜ | ふ | し | |
風 | の | 吹き | 頻く |
名 | 格助 | 動 | 動 |
主格 | カ四 (連用形) |
カ四 (連体形) |
あき | の | ||
秋 | の | 野 | は |
名 | 格助 | 名 | 係助 |
つらぬ | と | |
貫き | 止め | ぬ |
動 | 動 | 助動 |
カ四 (連用形) |
マ下二 (未然形) |
打消 (連体形) |
たま | ち | ||
玉 | ぞ | 散り | ける |
名 | 係助 | 動 | 助動 |
強意 | ラ四 (連用形) |
詠嘆 「ぞ」の結び(連体形) |
草の葉の上についた露に
風が吹きしきる
秋の野は、
(糸に)貫き止めていない
玉が散るよう(で美しい景色)だなあ。
出典『古今和歌集』秋中・308
白露が秋風で光り落ちる様子を、直接は歌い上げずに「貫き止めぬ玉」が散る比喩で表現している。
寂しい秋の野の中に、白露の美しさを見つけたところに、なんとも趣のある歌だ。
藤原定家はこの歌をとても風情があると高く評価していたようで、自身の様々な歌集に選び入れている。
文屋朝康(生没年未詳 )
文屋康秀の息子。
あまり伝記が残っておらず、『古今集目録』に892年に駿河掾、902年に大舎人大允に任じられた以外は伝不明。
『寛平御時后宮歌合』などの歌合わせで歌を詠んでいる記録があり、歌人としては名を馳せていたようである。