夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを
雲のいづくに 月やどるらむ
| なつ | よ | ||
| 夏 | の | 夜 | は |
| 名 | 格助 | 名 | 係助 |
| よひ | ||
| まだ | 宵 | ながら |
| 副 | 名 | 副助 |
| 日暮れ〜夜中まで 夜の前半。 |
…のままで。 |
| あ | ||
| 明け | ぬる | を |
| 動 | 助動 | 接助 |
| カ下二 (連用形) |
完了「ぬ」 (連体形) |
逆接 |
| くも | |||
| 雲 | の | いづく | に |
| 名 | 格助 | 代名 | 格助 |
| どこ。 |
| つき | やど | |
| 月 | 宿る | らむ |
| 名 | 動 | 助動 |
| ラ四 (終止形) |
推量 「いづく」→(連体形) |
(短い)夏の夜は
まだ宵だと思っているうちに
明けてしまったが、
(月が西まで動いている暇はないだろうから)
雲のどこに
月は宿っているのだろうか。
出典『古今和歌集』夏・166
詞書には
「月のおもしろかりける夜、あかつきがたによめる 深養父」
とある。
「夏の夜に、夜中ずっと月を観ていて、その暁方に詠んだ」ということになる。 明け方に出ているということは、「有明の月」だ。
雲の中に隠れてしまった月を惜しんで、思い浮かべながら余情を歌い込んだ歌。
『新撰和歌』『古今六帖』(いずれも平安中期頃成立?)などの和歌集に収録され、存命当時は認められていたものの、藤原公任の『三十六人撰』から漏れてしまったことであまり顧みられない歌になってしまった。
平安末期になってから、俊成の『古来風躰抄』に選ばれるなどして、再評価を受けた。
清原深養父(生没年未詳 )
清少納言の曾祖父にあたる。琴を得意としていた。
藤原兼輔の邸宅に出入りしており、紀貫之・凡河内躬恒との親交があった。