わびぬれば 今はた同じ 難波なる
身をつくしても あはむとぞ思ふ
わび | ぬれ | ば |
動 | 助動 | 接助 |
バ上二 (連用形) |
完了 (已然形) |
原因 |
いま | おな | |
今 | はた | 同じ |
名 | 副 | 形シク |
(終止形) |
なには | |
難波 | なる |
名 | 助動 |
【現在の大阪の地名】 | 存在 (連体形) |
【掛詞】 澪標(みおつくし) | ||||
身 | を | つくし | て | も |
名 | 格助 | 動 | 接助 | 係助 |
対象 | サ四 (連用形) |
感動的強意 |
おも | ||||
あは | む | と | ぞ | 思ふ |
動 | 助動 | 格動 | 係助 | 動 |
ハ四 (未然形) |
意志 (終止形) |
強意 | ハ四 (連体形) |
(噂が立って)思い悩んでいるのだから
今はもう同じことだ。
難波にある
私の身を尽くしても
(あなたに)会いたいことだと思う
出典『後撰集』恋5・961
作者の元良親王が、京極御息所(藤原褒子、宇多天皇の后)との逢瀬が露見してしまい、世の噂となってしまった中で苦しみながらも、なお会いたいという気持ちを詠み上げた熱愛の歌。
澪標の語源は「水脈つ串」といわれる。往来する船に対して水脈を知らせるために立ててある竿のこと。
「身を尽くす」との掛詞になっている。
元良親王(890 - 943)
陽成天皇の第一皇子だが、父の譲位後に生まれたため天皇とはならなかった。
好色の風流人としての逸話が『大和物語』『今昔物語集』などに多く残っており、その性格がこの歌にも強く表れている。