二階の窓から

020 わびぬれば


わびぬれば 今はた同じ 難波なる
身をつくしても あはむとぞ思ふ

元良親王もとよししんわう

品詞分解

わび ぬれ
助動 接助
バ上二
(連用形)
完了
(已然形)
原因
いま おな  
はた 同じ
形シク
(終止形)
なには
難波 なる
助動
【現在の大阪の地名】 存在
(連体形)
【掛詞】 澪標(みおつくし)
つくし
格助 接助 係助
対象 サ四
(連用形)
感動的強意
おも  
あは 思ふ
助動 格動 係助
ハ四
(未然形)
意志
(終止形)
強意 ハ四
(連体形)

現代語訳

(噂が立って)思い悩んでいるのだから
今はもう同じことだ。
難波にある澪標みおつくしのように
私の身を尽くしても
(あなたに)会いたいことだと思う

作品の解説

出典『後撰集』恋5・961

作者の元良親王が、京極御息所きょうごくのみやすどころ藤原褒子ふじわらのほうし、宇多天皇の后)との逢瀬が露見してしまい、世の噂となってしまった中で苦しみながらも、なお会いたいという気持ちを詠み上げた熱愛の歌。

みをつくし:澪標

澪標の語源は「水脈みをつ串」といわれる。往来する船に対して水脈を知らせるために立ててある竿のこと。
「身を尽くす」との掛詞になっている。

作者

元良親王もとよししんわう(890 - 943)

陽成天皇の第一皇子だが、父の譲位後に生まれたため天皇とはならなかった。
好色の風流人としての逸話が『大和物語』『今昔物語集』などに多く残っており、その性格がこの歌にも強く表れている。

百人一首 (角川ソフィア文庫)
→Amazon.co.jpで購入

島津 忠夫 (翻訳)
文庫: 317ページ
出版社: 角川書店; 新版 (1999/11)
言語: 日本語
商品パッケージの寸法: 15 x 10.6 x 1.4 cm
←前
019 なにはがた
次→
021 いまこむと
二階の窓から > 古典ノート > 品詞分解 百人一首 > 020 わびぬれば