二階の窓から

012 あまつ風


あまつ風 雲のかよひ路 吹とぢよ
乙女のすがた しばしとゞめむ

僧正 遍昭そうじやうへんぜう

品詞分解

かぜ
あま
格助
【天】 所属
くも      ぢ
かよひ路
格助
【通い路】
ふ  
吹き とぢよ
カ四
(連用形)
ダ上二
(命令形)
をとめ
乙女 すがた
格助
 
しばし とどめ
助動
マ下二
(未然形)
意志
(終止形)

現代語訳

空の風よ
(天女が通っていくという)雲の中の通路を
吹き閉ざしてくれ。
あの美しい天女たちの姿を
まだしばらくここにとどめたいのだ。

作品の解説

出典『古今和歌集』雑上・872

古今和歌集に原歌があり、そこに、五節舞(新嘗祭での踊り)の舞姫の美しさを見て詠んだものというコメントがある。
当時は天女の伝説が生き生きと語られる時代であり、舞姫と天女のイメージが重なったのだと思われる。

舞姫の美しさに興奮し、「舞が終わらないで欲しい」と思う気持ちを大袈裟に詠んだのだろう。
坊さんが舞姫にコーフンしていて良いのか? と思われるかもしれないが、遍昭が出家する前の作品なので安心して欲しい。

作者

僧正 遍昭そうじやうへんぜう (816-890)

俗名は吉岑 宗貞よしみねのむねさだ。桓武天皇の孫で、蔵人頭(天皇の秘書的なポジション)も務めていたが、仁明天皇の急死で出家した。六歌仙の一人である。

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久保田 淳 (監修)
単行本: 354ページ
出版社: 明治書院 (1998/10)
ISBN-10: 4625513189
ISBN-13: 978-4625513183
商品パッケージの寸法: 22.4 x 15.6 x 3 cm
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