あまつ風 雲のかよひ路 吹とぢよ
乙女のすがた しばしとゞめむ
かぜ | ||
あま | つ | 風 |
名 | 格助 | 名 |
【天】 | 所属 |
くも | ぢ | |
雲 | の | かよひ路 |
名 | 格助 | 名 |
【通い路】 |
ふ | |
吹き | とぢよ |
動 | 動 |
カ四 (連用形) |
ダ上二 (命令形) |
をとめ | ||
乙女 | の | すがた |
名 | 格助 | 名 |
しばし | とどめ | む |
副 | 動 | 助動 |
マ下二 (未然形) |
意志 (終止形) |
空の風よ
(天女が通っていくという)雲の中の通路を
吹き閉ざしてくれ。
あの美しい天女たちの姿を
まだしばらくここにとどめたいのだ。
出典『古今和歌集』雑上・872
古今和歌集に原歌があり、そこに、五節舞(新嘗祭での踊り)の舞姫の美しさを見て詠んだものというコメントがある。
当時は天女の伝説が生き生きと語られる時代であり、舞姫と天女のイメージが重なったのだと思われる。
舞姫の美しさに興奮し、「舞が終わらないで欲しい」と思う気持ちを大袈裟に詠んだのだろう。
坊さんが舞姫にコーフンしていて良いのか? と思われるかもしれないが、遍昭が出家する前の作品なので安心して欲しい。
僧正 遍昭 (816-890)
俗名は吉岑 宗貞。桓武天皇の孫で、蔵人頭(天皇の秘書的なポジション)も務めていたが、仁明天皇の急死で出家した。六歌仙の一人である。