二階の窓から

011 わたのはら


わたのはら 八十嶋やそしまかけて 漕出ぬと
人にはつげよ あまのつりぶね

参議 篁さんぎたかむら

品詞分解

わたのはら
【海の原】
やそしま
八十嶋 かけ
接助
カ下二
(連用形)
こ   い  
漕(ぎ) 出(で)
助動 格助
ガ上二
(連用形)
ダ下二
(連用形)
完了
(終止形)
ひと つ  
告げよ
格助 係助
対象 限定・強調 ガ下二
(命令形)
あま つりぶね
格助
【海人】 【釣り舟】

現代語訳

広々とした海原
はるかの多くの島々に心を寄せて
今船をこぎ出したと
京の都にいるあの人にだけは告げておくれ
釣り人の船よ。

作品の解説

出典『古今和歌集』羈旅・407

参議篁が隠岐の島へ流罪となり船出をしたとき、 はるかな海原への船旅を前にして、故郷の都を思いやった歌である。

流罪になった理由は、遣唐使としての乗船を拒否し、遣唐使を揶揄する漢詩を作ったために、嵯峨上皇の怒りを買ってしまったことだった。

流罪の船出の割には清々しい調子の歌で、悲壮感はあまり感じられない。
釣り人に呼びかける形になっていることで、孤独の余情が効果的に表現されているといえるだろう。

作者

参議 篁さんぎたかむら (802-852)

小野篁。小野小町の祖父ともされるが、資料が少なく真偽は不明。
当時漢詩で名高かった岑守みねもりの息子。岑守とともに赴いた陸奥で過ごした幼時は弓馬を好み、帰京後もあまり学問をしなかった。これを嵯峨天皇に嘆かれ、学問に転じた。漢詩文で名をあげ、多くの伝説を残した人物。

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