二階の窓から

009 花のいろは


花のいろは うつりにけりな いたづらに
我身よにふる ながめせしまに

小野小町をののこまち

品詞分解

はな
いろ
格助 係助
 
うつり けり
助動 助動 終助
ラ四
(連用形)
完了
(連用形)
詠嘆
(終止形)
感動
いたづらに
形動ナリ
(連用形)
(が) ふる
代名 格助 格助 動【掛詞】
【世】 経る(ハ下二・連体形)
+降る(ラ四・連体形)
ながめ
名【掛詞】 助動 格助
「眺め」
+「長雨」
サ変
(未然形)
過去
(連体形)
【間】

現代語訳

美しい花の色は
色あせてしまったことだなあ。
春の長雨が降り、
男女の仲に思い悩んでぼんやりしているうちに。

作品の解説

出典『古今和歌集』春下・113

花の色は 移りにけりな」というのは、単に花の色がかわってしまった=時が経ってしまった、という意味もあるが、「我が身の容姿の衰え」も暗に意味していると解釈されることが多い。

しかし、本来の歌はあくまでも花の色・時の移り変わりだけを意図したものだろう。なぜなら、古今集で「春」部に配置されているからだ。
その後、小野小町=美人説が喧伝されるようになってから、容姿についての解釈が根強く出てきた、というのが実態だろう。

作者

小野小町をののこまち (生没年未詳)

小野篁の孫、あるいは出羽郡司・良真の娘という説もあるが、良真が架空の人物らしく、小野氏の女性であるということ以外は不明である。
『小町集』は他人の歌や後人の偽作が多く混じっており、確実に小町の作といえる歌は少ない。

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