二階の窓から

008 我庵は


我庵は 都のたつみ しかぞすむ
世をうぢ山と 人はいふ也

喜撰法師きせんほつし

品詞分解

いほ
(が)
代名 格助 係助
所有 主体
みやこ
たつみ
格助
【巽】(南東)
しか すむ
【掛詞】 係助
副「然か」
+名「鹿」
「ぞ」の結び(連体形)
   やま
うぢ山
格助 【掛詞】 格助
名「宇治山」
+形「憂し」
ひと なり
いふ
係助 助動
ハ四
(終止形)
伝聞推定
(終止形)

現代語訳

私の庵は
都の南東にある。
このように鹿が住むような所に暮らしている。
憂き山、宇治山だと
世の人々は言っているそうだ。

作品の解説

出典『古今和歌集』雑下・983

もともとは、喜撰法師が自分の住処を言葉遊びで自己紹介した歌だった。

ところが『源氏物語』が大流行してから、『宇治十帖』によって宇治=「憂き」場所というイメージが定着し、「世をうぢ山」という表現は、「『源氏物語』から世の人が憂いを感じるあの宇治山」、というニュアンスに変容してしまった。
さらに「然か」+「鹿」を掛詞として解釈することで、鹿の悲しげな鳴き声が聞こえる山里というイメージが被さるようになった。

作者

喜撰法師きせんほつし(生没不詳)

六歌仙の一人として有名だが、この歌以外には確実に喜撰法師と分かっている歌がない。伝未詳。

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