二階の窓から

007 天の原


天の原 ふりさけみれば 春日なる
三笠の山に いでし月かも

阿倍仲麿あべのなかまろ

品詞分解

あま  はら
天の原
 
み  
ふり さけ 見れ
接頭 係助
強意 カ下二
(連用形)
マ上一
(已然形)
かすが
春日 なる
助動
存在
(連体形)
みかさ やま
三笠
格助 格助
 
い  つき
出で かも
助動
ダ下二
(連用形)
過去
(連体形)
詠嘆

現代語訳

大空を
はるかに見渡すと
(故郷の)春日にある
三笠の山に
出ていた、あの月だなあ。

作品の解説

出典『古今和歌集』羈旅・406

望郷の気持ちを詠んだ歌。
羈旅きりょ」(旅情を詠んだ歌をまとめた部分)に分類されているので、遣唐使として日本から蘇州へ赴く際に詠まれたものだという説が有力だ。

素直で淡々とした口調であり、洗練された印象を受ける。仲麻呂自身が生きた万葉時代の作風とは異なるので、改編されて愛誦されたものと思われる。
作中の「春日」・「三笠山」は奈良県の地名と解釈されるが、福岡県の太宰府近辺にある春日・御笠山とする説もある。

作者

阿倍仲麿あべのなかまろ(698-770)

717年に遣唐使として唐へ渡る。結局日本へ戻ることも叶わず、54年間を唐にて過ごした。李白・王維と親交があったとされる。

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正延 哲士(著)
単行本: 257ページ
出版社: 三一書房 (1994/12/1)
ISBN-10: 4380942783
ISBN-13: 978-4380942785
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