おくやまに 紅葉踏分 なく鹿の
声きくときぞ あきは悲しき
おくやま | に |
名 | 格助 |
【奥山】 |
もみぢ | ふみ | わけ |
紅葉 | 踏(み) | 分(け) |
名 | 動 | 動 |
マ四 (連用形) |
カ下二 (連用形) |
しか | ||
なく | 鹿 | の |
動 | 名 | 格助 |
カ四 (連体形) |
こゑ | |||
声 | きく | とき | ぞ |
名 | 動 | 名 | 係助 |
カ四 (連体形) |
強意 |
かな | ||
あき | は | 悲しき |
名 | 格助 | 形シク |
【秋】 | 係助「ぞ」の結び (連体形) |
奥山に
(散った)紅葉を踏分けて
鳴く鹿の
声を聞くとき、じつに
秋は悲しいと深く感じることだ。
出典『古今和歌集』秋上・215
紅葉の中で鹿の鳴き声に妻恋いのイメージが重なり、自然と秋の悲しさへとイメージが移ってゆく。
新古今時代に好まれたほのかな艶っぽさ・哀感といった作風がよく現れた作品である。
猿丸大夫(生没年不詳)
「いつの時代の人物かもよく分からない」(三十六歌仙伝)という伝承が残っており、謎の多い人物。