二階の窓から

005 おくやまに


おくやまに 紅葉踏分 なく鹿の
声きくときぞ あきは悲しき

猿丸大夫さるまるたいふ

品詞分解

おくやま
格助
【奥山】
もみぢ ふみ わけ
紅葉 踏(み) 分(け)
マ四
(連用形)
カ下二
(連用形)
しか
なく 鹿
格助
カ四
(連体形)
こゑ
きく とき
係助
カ四
(連体形)
強意
かな   
あき 悲しき
格助 形シク
【秋】 係助「ぞ」の結び
(連体形)

現代語訳

奥山に
(散った)紅葉を踏分けて
鳴く鹿の
声を聞くとき、じつに
秋は悲しいと深く感じることだ。

作品の解説

出典『古今和歌集』秋上・215

紅葉の中で鹿の鳴き声に妻恋いのイメージが重なり、自然と秋の悲しさへとイメージが移ってゆく。
新古今時代に好まれたほのかな艶っぽさ哀感といった作風がよく現れた作品である。

作者

猿丸大夫さるまるたいふ(生没年不詳)

「いつの時代の人物かもよく分からない」(三十六歌仙伝)という伝承が残っており、謎の多い人物。

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三好 正文 (著)
単行本: 257ページ
出版社: 創風社出版 (2000/10)
ISBN-10: 4915699927
ISBN-13: 978-4915699924
商品パッケージの寸法: 19 x 13.2 x 2.4 cm

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