田子の浦に うち出てみれば 白妙の
ふじのたかねに 雪はふりつゝ
たごのうら | |
田子の浦 | に |
名 | 格助 |
い | ||||
うち | 出(で) | て | みれ | ば |
接頭 | 動 | 接助 | 動 | 接助 |
ダ下二 (連用形) |
マ上一 (已然形) |
しろたへ | |
白妙 | の |
名 | 格助 |
ふじ | の | たかね | に |
名 | 格助 | 名 | 格助 |
【富士】 | 【高嶺】 |
ゆき | |||
雪 | は | ふり | つつ |
名 | 係助 | 動 | 接助 |
ラ四 (連用形) |
継続 |
田子の浦に
出てみると、
真っ白な
富士の高嶺に
雪が降っていることだなあ。
最後の「つつ」は接続助詞で終わる「言いさし表現」。余情を表現するために用いる。この現代語訳では「〜だなあ。」と訳出している。
出典『新古今和歌集』冬・675
万葉集の原歌
「田子の浦ゆ うち出てみれば 真白にぞ 富士の高嶺に 雪は降りける」
は、真っ白に雪の積もった富士山を田子の浦から見た雄大な光景を詠み上げた歌として名高い。
それに比べると、結句が継続の接続助詞「つつ」となっている本句は、まさに今雪が降っている歌となってしまい、そうすると雲と雪で富士の頂上は見えないはずで、実景としてあり得ない。そのため、歌調は原歌より流麗となっているが改悪である、とされることが多い。
ただし、想像の中で幻想的に情景を詠み上げているとみる向きもあり(水無月抄など)、そういった点で本歌が収録されたようである。
山部赤人(生没年不詳)
奈良時代初期の歌人。下級の官職にあったが、柿本人麿と並んで歌人としては名を馳せた。