二階の窓から

003 足引の


足引の 山鳥の尾の しだり尾の
ながながし夜を ひとりかも寝む

柿本人丸かきのもとのひとまる

品詞分解

あしびき
足引
格助
【枕詞→山】
やまどり
山鳥
格助 格助
しだり
格助
ラ四
(連用形)
ながながし
形シク 格助
(終止形)
ひとり
係助 係助 助動
疑問 詠嘆 ナ下二
(未然形)
推量
(連体形)

現代語訳

山鳥の尾の
長く垂れ下がっている尾の(ように)
たいへん長い夜を
(恋人と離れて)ひとりで寝ることであろうかなあ。

作品の解説

出典『拾遺集』恋3・778

「足引の」という枕詞から「山鳥の尾の」「しだり尾の」と続け「ながながし夜」につなげることで、序詞で秋の夜の長さを巧みに表現している。
当時、「山鳥は夜、雌雄が谷を隔てて寝る」といわれており、この習性が思いおこされていたと思われる。ちなみに、山鳥の尾が長いのは雄である。

作者

柿本人丸かきのもとのひとまる(または人麿ひとまろ)・生没年不詳

7世紀末の宮廷歌人であり、行幸に従いさまざまなところで歌を詠みつつ、一生低い官位で過ごした。
万葉時代最大の歌人であり、『万葉集』には長歌18首、短歌約70首を残した。歌の神として神格化され、平安末期以降は「人丸影供えいぐ」という礼拝が行われるほどであった。

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古橋信孝 (著)
単行本: 272ページ
出版社: ミネルヴァ書房 (2015/9/10)
言語: 日本語
ISBN-10: 4623074129
ISBN-13: 978-4623074129

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