二階の窓から

002 春すぎて


春すぎて 夏来にけらし 白妙の
ころもほすてふ あまのかぐ山

持統天皇ぢとうてんわう

品詞分解

はる
すぎ
接助
ガ上二
(連用形)
なつ
け(る) らし
助動 助動 助動
カ変
(連用形)
完了
(連用形)
過去
(連体形)
推量
(終止形)
しろたへ
白妙
格助
 
ころも ほ   ちょう
干す てふ
【連語】と+いふ
サ四
(終止形)
伝聞
あまのかぐ山
【天の香具山】

現代語訳

春が過ぎて
もう夏が来てしまったようだ。
(昔から)真っ白な衣を
干すという
天の香具山(には、白い衣が干してあることだ)。

作品の解説

出典『新古今和歌集』夏・175

万葉集28番の原歌「春過ぎて 夏来るらし 白栲の 衣干したり あめの香具山」からやや語調が和らげられている。
とくに、「衣干したり」から「衣干すてふ」への変更は、伝聞という形になっており、実景をもとにした感動が弱まっている。これには、「伝承」であることを意識した撰者たちの意図が隠れている。

天香具山は現在の奈良県橿原市にある山だ。 持統天皇の時代は藤原京(奈良)からの実景としてよく見えたことだろう。
ところが、平安京(京都)に遷都してから天香具山は身近な山では無くなってしまい、「伝承」「幻想」となってしまったのである。

作者

持統天皇ぢとうてんわう(645-702)

1番(秋の田の〜)を詠んだ天智天皇の第二皇女。在位は690〜697年。吉野をはじめとして御幸の多い天皇であった。柿本人丸を重用しており、旅の中で人丸のすぐれた長歌が多く生まれた。これが万葉調和歌の最盛期をもたらした。

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言語: 日本語
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