春すぎて 夏来にけらし 白妙の
ころもほすてふ あまのかぐ山
はる | ||
春 | すぎ | て |
名 | 動 | 接助 |
ガ上二 (連用形) |
なつ | き | |||
夏 | 来 | に | け(る) | らし |
名 | 動 | 助動 | 助動 | 助動 |
カ変 (連用形) |
完了 (連用形) |
過去 (連体形) |
推量 (終止形) |
しろたへ | |
白妙 | の |
名 | 格助 |
ころも | ほ | ちょう |
衣 | 干す | てふ |
名 | 動 | 【連語】と+いふ |
サ四 (終止形) |
伝聞 |
あまのかぐ山 |
名 |
【天の香具山】 |
春が過ぎて
もう夏が来てしまったようだ。
(昔から)真っ白な衣を
干すという
天の香具山(には、白い衣が干してあることだ)。
出典『新古今和歌集』夏・175
万葉集28番の原歌「春過ぎて 夏来るらし 白栲の 衣干したり 天の香具山」からやや語調が和らげられている。
とくに、「衣干したり」から「衣干すてふ」への変更は、伝聞という形になっており、実景をもとにした感動が弱まっている。これには、「伝承」であることを意識した撰者たちの意図が隠れている。
天香具山は現在の奈良県橿原市にある山だ。 持統天皇の時代は藤原京(奈良)からの実景としてよく見えたことだろう。
ところが、平安京(京都)に遷都してから天香具山は身近な山では無くなってしまい、「伝承」「幻想」となってしまったのである。
持統天皇(645-702)
1番(秋の田の〜)を詠んだ天智天皇の第二皇女。在位は690〜697年。吉野をはじめとして御幸の多い天皇であった。柿本人丸を重用しており、旅の中で人丸のすぐれた長歌が多く生まれた。これが万葉調和歌の最盛期をもたらした。