二階の窓から

電子ピアノを選ぶ


2016年11月26日

 長年弾いてきたヤマハの電子ピアノ(CLP-123)が遂に壊れた。
 黒鍵の一つが、弾くと凹んだままで戻らなくなってしまった。20年以上前のピアノだったし、本当に「遂に」という感じだ。

 20年を経て、電子ピアノはどのぐらい進化したんだろうか? −−どうやってピアノを選んだのか、実際の体験記だ。

電子ピアノはどこで買うべきか?

試奏は必ずしよう

 ピアノを買うに当たって、どうやって選ぼうかと悩んでいるあなた。
 何を買うにしても現物を見て触ることは大事だが、特に楽器はこれが大事である。感触、質感、演奏のしやすさなど、現物を前にしないと何も確認できない。

 もっとも、ピアノを弾く本人が買いに行く場合は何の問題もないが、厄介なのは「自分はピアノを弾かないけど、子供が弾くので買いに行く」というパターンだろう。何しろ試し弾きをしろといっても、「私は弾けないんですけど……」ということになる。
 この場合、ピアノの先生に聞くとか、ピアノが弾ける友人に聞くとかする他ない。あとは、ピアノを弾く本人(お子さん)がそのピアノを気に入るかどうか、でしょうね。

向かうべきは家電量販店

 さて、本題。電子ピアノはどこで買うべきか?
 これについては、実は最初から決めていた。家電量販店以外あり得ないのである。

 順を追って説明しよう。まず、中古か、新品か、という話がある。
 電子ピアノなら、新品を買うべきだ。

 理由は電子ピアノの寿命にある。電子ピアノはそれほど寿命が長くない。今回のピアノも20年でガタが来たし、まあこのぐらいだと思う。中古ということは誰かが使用したということだから、寿命はさらに短くなる。よっぽど安いとか、誰かから譲ってもらえるとかなら別だが、中古はあまりお勧めできない。というわけで、中古のピアノが置いてあるところはやめた。

 さて、新品のピアノが置いてあるのは、ピアノメーカーの直売店と、家電量販店がある。
 「絶対にヤマハじゃないと嫌!」とかいうことがない限り、家電量販店に行くべきである。

 理由は簡単。いろんなメーカーのピアノをを弾き比べることができるからだ。そりゃそうだよね。ヤマハのお店でカワイのピアノは試奏できません。
 というわけで、各メーカーの特性が知りたい僕は家電量販店に向かった。

ピアノ選びの基準は鍵盤

 ビ○クカメラへ着き、ざっとピアノ売り場を確認したところ、各メーカーのエントリーモデルから中級機(最高で20〜30万円程度)までが置いてある感じだった。最上位機種だけは置いてないようだったが、まあそれで充分。
 じっくり見ているとすぐに説明員のおばちゃんがやってきた。ずばり、「どのメーカーが良いんですかね?」と聞いてみたところ、「何を重視するんですか?」と逆に聞かれた。なるほど、確かにそのとおりだ。

 僕は鍵盤がアコースティックピアノに近いのが良い、と思っていたのでそう伝えた。

 電子ピアノを買うときに、音色にこだわる方も多いかと思いますが、それよりも圧倒的に大事なのは鍵盤です。

 なぜか? それは、結局ピアノの世界でスタンダードなのはグランドピアノだからです。たとえば、ピアノを習うなら、一番の晴れの舞台は発表会でしょう。発表会は、必ずといって良いほどグランドピアノを弾くことになります。また、ピアノを習うときも、教室ではグランドピアノを弾くのが基本になると思います。ですから、家で練習する電子ピアノと、グランドピアノと感覚のずれがなるべくないようにするのが非常に大事になります。鍵盤の感覚がグランドピアノと近ければ近いほど、練習にふさわしい電子ピアノといえます。

 おばちゃん曰く、鍵盤にこだわっているのはカワイローランドだということ。
 あら?ヤマハはそうじゃないの? というか、ローランドってシンセサイザー屋さんのイメージしか無かったので、あまり候補として考えてなかった。というわけで、カワイとローランドを重点的に、各社のピアノを試奏していくことにした。

各メーカーのピアノの特色

ヤマハ

 まずはヤマハのピアノを弾いてみた。YDP-163(約10万円)、CLP-535(20万円弱)を触った。

 各機種に共通する鍵盤の感触としては、弾きやすいという印象。いや、少々弾きやすすぎるという気がする。平坦というか、精密機械っぽい。アコースティックピアノとは結構違うかなあ、という感じだ。
 それにしても、クラビノーバは音色の多いこと……。まあ20年前の電子ピアノの8音色ってのが少なすぎるのかも知れないけど、ピアノ以外使わないし要らないよねえ、という。

ローランド

 さて、お次はローランド。RP501R(約10万円)を触った。

 こちらも、ヤマハと結構似ていて、ちょっとメカっぽさがある。が、ヤマハよりちょと鍵盤が重めで、「弾きやすすぎる」ということはない。演奏していて調子がのってくると、ぐんぐん楽しく弾けた。

 この上位機種で譜面台にでかい液晶画面がはめ込まれているHPi-50eというのが置いてあったが、こんなものは要らん!! 25万円ぐらいと無駄に高いだけなので、触らなかった。

カワイ

 さて、ヤマハの対抗馬、カワイ。CN25(10万円弱)、CN35(約15万円)、CA17(約18万円)を触った。

 CN25、これ良いぞ! ヤマハのYDP-163とほぼ同じ値段で、売り場でも向かい合って置いてあったけど、YDP-163よりもアコースティックピアノのタッチに近い。同じ値段なら、ヤマハより断然こちらが良い。

 カワイへの評価がぐんと上がったところで、上位機種のCN35も触ってみたが、正直CN25との大きな違いは、小さな液晶がついているところぐらいだろうか。今何の音色を選んでいるか、というのは分かりやすいが、鍵盤の感じはあまり変わらない。ピアノ以外の音色をあまり使わないならCN25を買った方が良さそうだ。

 続いて、CA17。これが色々触った中で一番良かった。
 CNシリーズの上位シリーズとなり、木製鍵盤になる。黒鍵まで木製鍵盤なのはカワイだけとか。べつに木製じゃなくても良いんだけどねえ……、と思いながら弾いてみると、思いの外これが良い。グランドピアノと同じ構造の鍵盤ということで、実際かなりアコースティックピアノのタッチに近いと感じた。ちょっと鍵盤が重めで、クリック感がある。そうそう、グランドピアノってこういう動きするよね、というのがきちんと再現されていて、感動した。


カワイのCA17。鍵盤を横から見ると木目が見える

カシオ

 さて、カシオ。AP-700(約15万円)を触った。ここにはがっかりさせられた

 ちょっと弾いただけで、頭に「ハテナ?」が浮かぶ鍵盤だった。鍵盤を押した瞬間、オモリの反動みたいなものを感じる。この機構で鍵盤の重さの調整をしているんだろうか。グランドピアノではこんな感触はない。何か違う。全体的にタッチも軽すぎて、生ピアノとはかなり違うと思った。

コルグ

 B1SP(約5万円)を触った。

 ここだけ価格帯が妙に安くて、グレードが違う。当然値段なりなので、良くはない。10万円以上の機種を触ってきてからこれを弾くと全然物足りなくて、残念ながら購入候補には入ってこなかった。コルグはキーボードメーカーというイメージがあるけど、やはり安価なモデルしか無いようなので、本格的にピアノを弾く方にはお勧めできないと思う。

お勧めはカワイ

 さて、5社のピアノを弾いてみて、筆者の個人的な印象としては下記のとおりだ。

カワイ>ローランド≧ヤマハ>コルグ>>カシオ

 カワイが群を抜いて良かった。安価なモデルが良いというなら、CN25が良いし、こだわりたいなら、CA17、という具合で選びやすいラインナップだ。
 ローランドとヤマハは甲乙付けがたいが、ヤマハの方がやや平坦で面白みに欠けると感じたので、ローランドの勝ち。
 コルグはあまり良くないけど、低価格モデルに絞るという戦略なのだろう。
 カシオは何をしたいのか……。高価なモデルなのに、残念な鍵盤なので、よろしくなかった。

CA17を買った

 というわけで、カワイのCA17を買いました。試奏すると色々分かりますね。皆様もお気に入りのピアノを買って、良きピアノライフを!

KAWAI デジタルピアノ CN25R 88鍵
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最大同時発音数:192音
音色数:19音色
譜面台:可倒式
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