ゲーム「シムシティ」シリーズの市民、「シム」たちの主食はブロッコリーであるという。 果たして、人間はブロッコリーを主食として生き延びることが出来るのか?今回は、そんなどうでも良い疑問を解決しようと思います。
ブロッコリーといえば我々もよく目にする、あの食材。ですが、詳しいことはあまり知らない方も多いのではないでしょうか。高校家庭科の資料集で調べてみましょう。
ブロッコリー
野生キャベツの一変種。先端の花蕾と、その近くの茎を食用とする。 イタリアを中心とする地域が原産地で、イタリアン・ブロッコリーとも言う。 カロテンが多い緑黄色野菜で、ビタミンCがとくに多い。鉄・カルシウム・カリウム・リンなども多く、貧血の予防に効果がある。塩茹でしてサラダや和え物、グラタンなどに、中国料理ではうま煮などに使う。
や、野生キャベツ!?キャベツの一種だったんですね。
そして気になる栄養価は、下の表のとおり。
可食部100gあたり | 水分 [%] | 熱量 [kcal] |
蛋白質 [g] |
脂質 [g] |
炭水化物 [g] |
Ca [mg] |
鉄 [mg] |
V.A [μg] |
V.C [mg] |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ブロッコリー(生) | 89.0 | 33 | 4.3 | 0.5 | 5.2 | 38 | 1.0 | 810 | 120 |
ブロッコリー(ゆで) | 91.3 | 27 | 3.5 | 0.4 | 4.3 | 33 | 0.7 | 770 | 54 |
ブロッコリーは生のほうが総じて栄養価が高いので、できることなら生食をしたいところ。しかし残念ながら生のブロッコリーは、特に茎の部分が非常に固く食えたものではない。主食として美味しく食べたいので、今後はゆでたブロッコリーを食べるものとして話を進めていくことにしよう。
まず、なんといっても必要なのはエネルギーです。カロリーベースで、どれほどのブロッコリーを摂取する必要があるのでしょうか。 20歳男性の場合は1日に2,650kcalが必要です。ということはブロッコリー1gあたり0.27kcalなので、1日に必要なブロッコリーは、
9.8kg!おいおい、我々の主食お米が10kgあったら何日もつことか。それが1日でなくなってしまうのです。なんという大食らい。
と考えるのは少し早計で、日本人だって主食の米だけでエネルギーの100%を摂取しているわけではないように、シム人だって何か他のエネルギー源があるはずです。「ニュービジュアル家庭科」によると、日本人は総エネルギーの60%を炭水化物(主食)から摂っているようなので、シム人も同じようなバランスの食生活をしているとすれば、この6割で済むことになります。
5.9kgです、良かった、6kgを切りましたよ!でも6kgのブロッコリーてどのぐらいの量か想像がつかないでしょう。
ズバリ、大体ブロッコリー約30株分です。
お、多すぎる。
1日3食とすれば、ちょうど1食で10株。毎食10株のブロッコリーが載った食卓……。シムは一体どんな胃をしているんでしょうか?
ともかく、これでエネルギーは確保されたわけだからダイスケ的にもオールオッケー♪(ネタが古い)、かというとそうではないのはおわかりでしょう。ビタミン類のバランスはどうなのでしょうか?
前章では必要なエネルギーを得るために、1日5,888.9gのブロッコリーを食わなければならないことが分かりました。本章ではビタミン類について検証を行います。さっそく、これだけの量のブロッコリーを食べることで、どのような栄養価をどれだけ摂取できるのか計算してみましょう。
熱量 [kcal] |
蛋白質 [g] |
脂質 [g] |
炭水化物 [g] |
Ca [mg] | 鉄 [mg] |
V.A [μg] |
V.C [mg] |
|
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
日必要摂取量 (20歳,男性) |
2,650 | 60 | 20 | 160 | 900 | 7.5 | 750 | 100 |
ブロッコリー(ゆで) [5,888.9g] |
1,590 | 206 | 23.5 | 253 | 1,943 | 41.2 | 45,338 | 3,480 |
<参考>炊飯(白米) [946.4g] |
1,590 | 23 | 2.8 | 351 | 28.4 | 0.9 | 0 | 0 |
ブロッコリーすごい!ブロッコリーはどの栄養価について見ても、日必要摂取量を超えています。何も不足するものがない、理想的な食品といってもよいのでは?
参考のため我らが日本人の主食、白米のデータも入れておきましたが、こうして見てみると、白米とブロッコリーでは全く栄養価が違います。白米はほとんどの栄養価が必要摂取量に届かず、エネルギーと炭水化物の塊であると言ってよいでしょう。
最初の説明に書いてあったように、カルシウム・鉄・ビタミンA・ビタミンCについては、豊富というか……もはや摂取しすぎの域に達しているような。とにかく不足しているものというのが見あたりません(少なくとも今挙げている栄養分の中では)。
栄養分の偏りが心配でしたが、もはや栄養分の60%と言わず100%をブロッコリーだけで摂取しても良さそうな気さえします。(いやまあ摂りすぎ、と言う意味でひどい偏りがあるんですが) では、摂りすぎても大丈夫なのか?そこをチェックしていきましょう。
栄養分によっては上限量があり、それを越す量を摂取すると過剰症が発生するものが有ります。表2に載っているものの中で上限量があるものは、鉄(上限45mg/日)、ビタミンA(同2,550μg/日)の二つです。
鉄分に関しては41.2mgなのでセーフですが、ビタミンAは45,338μg、つまり上限量のおよそ・・・18倍!これは過剰症が出るのは間違いなさそうです。主な過剰症としては、頭痛、吐き気、髪が抜ける、皮膚がはがれ落ちるといったもの。
また、ビタミンCに関しては、ハッキリとした上限量はありませんが、過剰症は存在し、主に尿酸結石、下痢などがあるようです。日必要量の35倍も摂っていたら間違いなくこういった症状が現れるはず。
人間がシム界で暮らすと、頭痛持ち、ハゲになり、しょっちゅうトイレに吐くor下痢のために駆け込む必要がある。
すごく壮絶な世の中になりそうです。
実教出版編集部 2007. 『ニュービジュアル家庭科 資料+成分表 改訂版』. 実教出版.
四季の野菜「ブロッコリー」 http://vegetable.alic.go.jp/panfu-siki/broccoli/index.htm