二階の窓から

デジモンアドベンチャー tri. 第1章「再会」


★★★★★

 映画館でデジモンを観てきた。
 物議を醸していたキャラデザインは、何の問題もなかった。というよりむしろ僕は大好きだ。デジモンが格好良くなって帰ってきた、それだけで嬉しい。

 そんなことより、問題は脚本。ストーリー(特に前半)がよくなかった。

 よいところ、よくないところが混在していて、非常に評価の難しい作品だったように思う。

 個人的に感じた、よかったところ、よくなかったところをまとめてみた。


よかったところ

キャラクターデザイン

 ネット上で心配の声が多く聞かれた部分だけれど、ばっちりはまっていた。
 デジモンたちのキャラデザはほぼそのままで全然違和感がなかった(ただしアグモンの顔色が悪い気がするけど)し、太一たちも、ちゃんと格好良く描かれていた。

後半の展開

 後半は、熱い展開。迷う太一、意外なほどに熱いヤマト。彼はこんなに熱かったっけ? そうだったような気もするけど、あまりにも昔すぎて覚えてない。
 ともかく、ヤマトに焚き付けられて、太一も決心するその瞬間。急にBGMも台詞も止まり、無音となるシーンがあった。

 観客一同ハッとし、つばを飲む「ごくり」という音が聞こえそうな感じの緊張感。

 そこからすっと落ち着いて笑顔になるところ、ここが非常に良かった。映画館ならではの演出だ。

懐かしかった

 懐かしい歌がいっぱいあふれてきて、それだけで懐古厨は大喜び。

 オープニングとエンディングは昔の「Butter-fly」(和田光司)と「I wish」(前田愛)がアレンジした上で歌い直していましたね。「I wish」については昔より今回の映画のエンディングのほうが良かった。

 進化の時の歌「brave heart」(宮崎歩)は、ほぼ当時のまま。最初の「ギュゥイィィィィーーン」(ギターの音)を聞くと未だにビビッと来るねえ。いやあ〜良い歌! それにしてもこの第1章ではこの曲が何度かかったことか分からず、少々頼りすぎの面があったのでは? と懐古厨でも思うぐらいなので、かなり多かったんだと思う。


よくなかったところ

前半のテンポが悪い

 ここがかなり痛かった。間が悪いというか、テンポが悪いというか、「この展開で大丈夫なのか……?」 とハラハラしながら観ていた。こんなことで観客にハラハラさせてはいけない

 今何が起きているのか/これから何が起こるかを説明するための、明らかすぎる伏線(「明らか」では「伏」線ではないかもしれないけど)てんこ盛りの展開で、ウ〜ン、という感じの前半だった。

「再会」シーンが呆気ない

 そして再会のシーン。太一が危機一髪のところで、アグモン登場。いよっ、待ってました、と思ってたらあれ、もう再会は終わり? という感じの呆気ない登場。


総評

懐かしさ

 いろいろよくないところが沢山目に付いた。特に前半のテンポの悪さは結構致命的だ。なのだけれど、昔テレビにかじりついていて観ていた我々世代だと、「懐かしい! 細かいことは、まあいいや!」、って感じになってしまうのがずるい。

 そしてそのあとの進化ラッシュ(つまり「brave heart」ラッシュである)で「うおおお!!」となって、前半部分のマイナスポイントは吹っ飛んでしまうという構造。

 終幕後、劇場から出る観客の声にも「懐かしかったね」「あのエンディング曲、昔よく聞いてたなあ」といった具合の『懐古』の声が多く聞こえた。けっきょく、「懐かしの作品」がきれいになって、「懐かしの曲」とともにスクリーンに大々的に映される、それだけで嬉しいのである。
 また、太一が成長して、昔のように単純に「闘う」という選択ができなくなってしまっているのも、そうよなあ、という感じで、しみじみする。時間の経過を感じて、「懐かしい」という気持ちをさらに助長する。この設定は良い。

 しかし、制作陣の皆さんには、「それに甘えて、作り込むことを怠ってはいけない」と申し上げたい。

時代設定の謎

 それから、どうでもいいことかもしれないけれど、携帯電話がいわゆる「ガラケー」ばかりで、何やら時代設定が今ではないようだぞ? と気にして観ていたら、作中に「2005年」という表記が出てきてた。ということは、この作品の舞台は2005年。

 「なぜに2015年の今、2005年の設定……?」
 何か意味があるのかもしれない。

第2章への期待

 ともかく、今回はいわば物語の導入部分であって、テンポが悪くなるのも仕方がないという面はある(もちろん、もっと上手い話の運び方はあったはずだけれど)。

 色々と不満な部分はあったけど、懐かしさのあまりに甘々な評価しかできなかった僕は、期待を込めて、第2章を待っている。

商品展開

 劇場限定盤BDは、公開1週間後の土曜日だというのにもう売り切れていた。一般発売があるようなので、こちらを買うしかなさそう。

Blu-ray

デジモンアドベンチャー tri. 第1章「再会」
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元永慶太郎(監督)
花江夏樹, 坂本千夏, 細谷佳正, 山口眞弓, 三森すずこ(出演)

販売元: Happinet
発売日 2015/12/18
時間: 80分

CD

Butter-Fly〜tri.Version〜
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和田光司

レーベル: FEEL MEE
収録時間: 8分

 また、劇場版公開にあわせてBlu-ray BOXの展開が進んでいる。

Blu-ray BOX

デジモンアドベンチャー 15th Anniversary Blu-ray BOX
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角銅博之 (監督)

販売元: Happinet
発売日 2015/03/03
時間: 1242 分

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デジモンアドベンチャー02 15th Anniversary Blu-ray BOX ジョグレスエディション(完全初回生産限定版)
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角銅博之 (監督)

販売元: Happinet
発売日 2016/03/02
時間: 1150 分

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